高成長&高年収!半導体160社図鑑#5Photo:Yuichiro Chino/gettyimages

半導体株高をけん引する日本の製造装置メーカー。東京エレクトロンやレーザーテックなど、高い世界シェアで業界をリードしている企業が多い一方で、業界全体を見渡してみると深刻な状況に陥っている。市場規模が大きく、成長性が高い製品と分野で負けが続き、日本全体ではシェアが急落、米国に突き放され欧州に抜かれる状況になっているのだ。強い日本の製造装置業界に何が起こっているのか。特集『高成長&高年収! 半導体160社図鑑』の#5では、有望銘柄とその強みと共に、一見好調な製造業界の構造的問題について取り上げた。(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)

株価が130倍、20倍に暴騰した製造装置銘柄
その強さの秘密と本当の実力は

 今の半導体関連株の高値をけん引する最大の立役者が半導体製造装置株だ。2014年には2000円台で推移していた東京エレクトロン(TEL)株は、現在なんと20倍の4万円台を付けている。

 同じ製造装置のディスコ株は14年には3000円台で同じく16倍、14年に300円台だったレーザーテックは130倍の4万円台にまで伸びた。同期間でデバイスのルネサスエレクトロニクスは約2倍、素材の信越化学工業は約4倍の伸びだ。これに比較してもいかに装置株の伸び方が異常か分かるだろう。

「世界シェアトップ」「世界で他のどこにもできない技術を持つ」というきらびやかな修飾語が製造装置業界には付いて回る。そもそも、なぜ日本の製造装置は強いのか。歴史をひもといてみよう。

 1980年代日本のデバイス企業が世界トップだった時代に、一蓮托生で製造技術を磨き併走することで成長してきたのが製造装置メーカーだ。

 その後90年代以降、日本のデバイスメーカーは次々と凋落、事業撤退や縮小をしていく。だが、装置メーカーはその後台頭してきた韓国、台湾、それに米国のデバイス企業に広く製造装置を販売することで、事業を拡大してきた。

「経営のスピードが速く、経営者が事業に愛情を持ち、顧客との信頼関係を大事にするという経営スタイルが、アジア・米国の顧客企業にも受け入れられた。最初は欧米のものを優先するスタンスだった顧客も徐々に日本メーカーの製品に切り替えてくれるようになり、シェアを伸ばしていった」と、20年来製造装置企業の分析を行っているモルガン・スタンレーMUFG証券の和田木哲哉シニアアナリストは解説する。

 中でも最近特異的に伸びているのが、生成AIのビジネスに絡む装置を販売できている企業だ。

 例えば生成AI半導体に使われる米エヌビディアのGPU(グラフィックプロセッサユニット)を生産するのに必要なのが、最先端の微細加工が可能なEUV露光装置(極端紫外線を使い、シリコンウエハーに回路を焼き付けるための装置)だが、EUV向けのマスク(回路を焼き付ける元となる原板)検査技術を世界で唯一持っているのがレーザーテックだ。

 EUVの登場と普及で、以前は100億円企業だった同社は売上高が10倍の1000億円規模に伸びた。同様に、GPUを動かすにはHBM(広帯域高速メモリー)という次世代DRAM(一時記憶用のメモリー)が必要だが、このHBM関連ビジネスに深く絡める研磨装置メーカーのディスコや検査装置メーカーのアドバンテストなどが大きく伸びている、といった具合だ。

 今後半導体製造装置株に投資する場合は、どのような視点が必要なのか。さらに、一見絶好調の製造装置業界にアキレス腱はないのか。

 実は、絶好調に見える製造装置業界だが、意外にも国内企業全体として見た場合、非常に危機的な状況にあるという。なにしろ、かつて5割を占めていたシェアは、23%に下がり欧州に抜かれて3番手になってしまっているからだ。これほど株価も高く市場に評価されている企業が多数あるだけに、意外な事実だ。その理由と企業ごとの注目ポイントや、中長期的な展望について和田木シニアアナリストに分析してもらった。