多くの日本企業は現在、売上比率の大きい国内市場でのシェアを確保しつつ、今後成長が見込まれる海外にも積極的に打って出なくてはならない状況に置かれている。そのため、限られた人材資源をどの市場にどれだけ投入していくか、という悩みも同時に抱えている。

 こうした事情を背景に、クロスフィールズでは企業に提案する派遣期間を「最低1ヵ月から12ヵ月」とした。これには、「企業と受け入れ先の機関、双方のニーズが関係している」と松島氏は説明する。

 留職が人材の育成や将来を見越した新興市場の開拓につながると分かってはいても、目先の利益を取りこぼしたくない企業にとって、脂ののったエース級の社員を長期間派遣することは、大きな抵抗感がある。一方で、社員を受け入れる新興国の機関にしてみれば、日本人のビジネスマンが数週間程度来たところで、「いったい何をしてくれるのか?」ということになり、迷惑がられるだけに終わってしまう可能性もある。学生ではなく社会人が行く以上、受け入れ先の機関にとってもメリットのある仕事を残せる人物、期間でなくては意味がないのだ。

 現地との信頼関係を結びつつ期待された成果を出すためには「派遣期間は最低1ヵ月間、派遣する社員も社会人経験3年以上が望ましい」と、松島氏は言う。

「帰国してから失敗が多くなった」
留職が“挑戦心”を呼び覚ます

 松島氏が、「留職」プログラムの導入に向けて企業の担当者と話していると、彼らは一様に目を輝かせて「自分も本当はこんなことがしたかった」「あんなことがしたかった」と熱い思いを語りだすそうだ。「ビジネスを通じて社会貢献したい」と高い志を持って入社した社員も、日々の仕事に追われるうちにいつしかそれを忘れてしまったか、口に出せなくなっているケースも多い。

 留職は、そんな社員の心に火をつけ、眠っていた志を呼び起こすきっかけにもなる。

「私自身もそうでしたが、働いているとどうしても『仕事』と『プライベート』を分けて考え、本当にやりたいことはプライベートで、という風に考えがち。でも、本当はそうではなく、会社の中でこそやりたいことをすべきだし、できるのではないか。日本でもそういう組織風土を広めたいと思って作ったスキームの1つが留職です」と、松島氏は語る。