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2030年のビジネスモデル

3000万人健診弱者の解消に挑み、
聖域に切り込む変革者

齊藤義明 [ビジネスモデル研究者、経営コンサルタント]
【第6回】 2013年5月14日
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「ワンコイン健診」が目指すのは国民医療費の抑制

 日本には過去1年間に健診を受けていない人たちが3000万人以上もいるという。健診を受けない人たちは、忙しくて健診に行く暇がない自営業者、子育てと家事に追われる主婦、保険証を持たないフリーターなどが多い。時間が取れない、費用が高い、保険証をもっていない、だから健診を受けないのだ。

 つまり、もっと気軽に立ち寄れる場所に、安い価格で、予約や検査に時間もかからずに、保険証すら不要ならば、この人たちだって健診を受けるはずだ。そうなれば、国民全体の生活習慣病の予防にもつながる。

 指先に採血器具を自分で取り付ける。わずかな血液がにじみ、それを検査試薬で吸い取り、測定器にセットする。たったこれだけで血糖値、総コレステロール、中性脂肪などの検査ができてしまう。ふらっと店舗に訪れて、最短1分で検査結果がわかる。保険証を持っていなくてもいい。料金は各検査ともワンコイン(500円)だ(注:通常は複数項目を検査する人が多いため客単価は1700円程度という)。

 現在、検査可能な項目は10項目程度だが、今後は感染症、がんの腫瘍マーカーなどにも検査項目を拡大していく予定だという。医師がいない環境で血液検査をやるのは日本では初の試み-これがケアプロ株式会社(代表取締役社長・川添高志氏)が立ち上げたワンコイン健診サービスである。

写真提供)ケアプロ株式会社

 ワンコイン健診が参考にしたのは、米国のスーパーマーケットの一角にあった「ミニッツ・クリニック」という医療サービス。

 看護師が常駐するこの小さなスペースでは、買い物客が診察、検査、投薬などの医療サービスを安価に受けることができ、米国では無保険者の健康を支える重要な役割を担っている。

 しかし日本では医師の指示なしに第三者が採血を行うことは医師法によって禁じられている。だが医師を雇えばコストが高くなってしまい、万人が受けられる安価なサービスを実現できない。このジレンマに対し、川添さんは「自己採血方式」というあっと驚く手法に打って出た。来店客が自分で指に針を刺し、それを看護士が検査するならば法律に抵触することはない。採血時は看護師がサポートするから安心。検査に使用する針・試薬は全て使い捨てのため衛生的である。

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齊藤義明[ビジネスモデル研究者、経営コンサルタント]

ビジネスモデル研究者、経営コンサルティング会社勤務。政策・経営コンサルティングの現場でこれまで100本以上のプロジェクトに関わる。専門は、ビジョン、イノベーション、モチベーション、人材開発など。

facebookページ:https://www.facebook.com/yoshiaki.saito.1042

 


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未来のパターンを作り出す企業は、はじめは取るに足らないちっぽけな存在だ。それゆえに、産業の複雑な変化の過程で、その企業はときに死んでしまうかもしれない。しかし個別企業は死んでも、実はパターンは生き続け、10年後、20年後、新しい現象として世の中に広がる。2030年の日本につながる価値創造のパターンとは何か。現在さまざまな領域でその萌芽に取り組む最前線の挑戦者たちとのダイアローグ(対話)。

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