短所を指摘されたら、
その短所を長所に変えよ

 前項の「相手の主張に賛成しながら有利な方向へ話を導け」の応用例をもう少し詳しく紹介しておこう。

 交渉において短所や弱みを指摘されたときは、「そんな短所はない」と否定しても相手は納得しない。むしろ強い口調で反論してくる。そうなれば、あなたの傷口はさらに広がりかねない。

 そうではなく、短所を指摘されたら、まず「そのとおり」と受け入れたうえで、その短所を長所に変換して伝えるのが効果的。思惑を外された相手は、とっさには反論できない。

 1984年、ロナルド・レーガン氏が2期目の当選を目指していたアメリカ大統領選挙のとき。対立候補のウォルター・モンデール氏が56歳だったのに対して、レーガン氏は73歳。高齢ゆえに、大統領の激務に耐えられないのではないかという論調が目立っていた。

 ところが、全米に生中継されたディベートで、自身の「年齢」について聞かれたレーガン氏はこう答えた。

「今回のキャンペーンにおいて、私は年齢については争点にしません。私は相手の若さと経験不足について、つけこむつもりはありません」

 つまりレーガン氏は、自身の高齢について報道されていたのを逆手にとり、「高齢というのは豊富な経験を持っている証であり、若さによる経験不足のほうが問題だ。でも(相手が気の毒だから)それを争点にはしませんよ」というメッセージを全米の国民に送ったのだ。

 この発言に聴衆は笑いと拍手を送り、結局、レーガン氏は大差で当選を果たした。

 もし、レーガン氏が「私はまだまだ若い!」などと自らの高齢を否定していたら、国民の反応は違っていただろう。