足もとで、韓国経済の減速が鮮明化している。2000年代は「最強」と呼ばれ、世界のあらゆる市場を席巻した韓国の勢いは、どこへ行ってしまったのか。韓国経済急減速の原因と復活への課題について、韓国経済に詳しい向山英彦・日本総合研究所上席主任研究員に聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 小尾拓也)

「強い韓国」はどこへ?
韓国経済が減速した真の理由

「危機説」が唱えられる韓国経済。朴政権の景気対策も手詰まり感がある。実態はどうなっているのかPhoto:Yonhap/AFLO

――韓国経済の減速を指摘する声は以前からありましたが、ここにきて減速が鮮明化していると言われます。実際のところ、韓国経済はどれくらい減速しているのですか。

 韓国の実質GDP成長率は、2011年3.7%、12年2.3%、13年3.0%、14年3.3%と、2~3%台で推移しています。とりわけ、14年10-12月期は前期比0.4%と、7-9月期の同0.9%から急減速しました。今年も3%程度の成長になると予想されます。

――現在の韓国経済を、どのように見ていますか。

 確かに、経済の低迷が続いていますが、韓国経済自体が大きく変わったとはみていません。外部環境の変化によって、従来の成長モデルが機能しなくなったと考えています。振り返れば、韓国経済が日本で最も高く評価されたのは、おおむね2010~11年です。この時期には、日本の新聞や雑誌で「韓国経済に学べ」「最強韓国」という社説や特集が現れました。11年の紅白歌合戦に韓国のグループが3組も出場し、韓国に対する「好感度」は高かったと言えます。

むこうやま・ひでひこ/日本総合研究所上席主任研究員。中央大学法学研究課博士後期過程中退、ニューヨーク大学で修士号取得。 証券系経済研究所を経て、1992年さくら総合研究所入社し、現在日本総合研究所調査部上席主任研究員。中央大学経済学部兼任講師。専門は韓国を中心にしたアジア経済の分析

 しかし、2012年8月に当時の李明博大統領が竹島(独島)に上陸したことをきっかけに、日韓関係が冷え込みました。ほぼ同時期に韓国経済が減速したこともあり、韓国経済に対する見方が一変し、ネガティブな捉え方が主流になって行きました。十分な分析を欠く「韓国経済危機」も流布しています。

――そもそも、これまでの韓国経済の強みはどこにあったのでしょうか。

 韓国では1990年代後半の通貨危機後、大幅なマイナス成長に陥り、構造改革が実施されました。国内市場の縮小もあり、韓国の大企業は2000年代に入り、輸出や現地生産などグローバル展開を加速させました。一方政府は、法人税や電力料金の引き下げ、近年ではFTAの促進などを通じて、企業のグローバル展開を積極的に支援しました。その結果、韓国企業は世界市場でシェアを上げ、国内でも輸出主導型の経済成長が続いたのです。通貨危機後のリストラやウォン安などが、輸出競争力の上昇を後押しした側面もあります。

 これが2000年代に形成された「韓国型の成長モデル」です。当時は日本経済が停滞していたので、そうしたグローバル化を進める韓国の姿勢を見倣おうという空気も日本にはありました。