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山田英夫のビジネスモデル・ラボ

ソニー損保の自動車保険に優良ドライバーが年々溜まっていく仕組み(下)

山田英夫 [早稲田大学ビジネススクール教授]
【第2回】 2016年6月20日
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>>(上)より続く

ソニー損保の保険に
優良ドライバーが溜まる仕組み

「やさしい運転 診断レポート」の見本
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 テレマティクス保険は説明が難しい保険なので、ソニー損保ではウェブ専用とし、消費者からのプルを中心とすることに決めた。コールセンターは、あくまでも販売のサポートと位置づけた。ウェブでは動画を使って、当保険の契約からキャッシュバックまでの流れを説明し、それを理解してくれた消費者が契約まで進んでくれる。

 通常の自動車保険に割高感を感じる若年の優良ドライバーをターゲットとして発売したが、実際の加入者は若者も獲得できているものの、通常の自動車保険と同様、ボリュームゾーンの中年層が多数となっている。

 やさしい運転キャッシュバックのリピートに関しては、点数が高くキャッシュバックを受けた人のリピート率が高く、それに比べてキャッシュバックがなかった人のリピート率は低い傾向がある。すなわち年を経るに連れ、ソニー損保には優良ドライバーだけが溜まっていく仕組みと言える。

 テレマティクス保険の宿命としては、市場規模には限界があり、全自動車保険の中でシェアを限りなく大きくすることはできない。それは、全ドライバーに占める優良ドライバー比率は大体決まっており、シェア10%程度なら優良ドライバーだけが加入することはあり得るが、シェア30%となると優良でないドライバーまでも獲得しなくてはならないからだ。彼らは保険料が割高になり、この保険にはもともと加入しないため、それは現実的ではない。

 保険は認可事業なので、認可申請のための事前のデータ蓄積が必要である。また膨大なデータを採るだけでなく、それを保険料にどう反映させたらよいか、というところにノウハウが必要である。そのため追随企業はあるが、ソニー損保は時間的に先行している優位性を活かし、さらに次の展開に進むことも可能である。なお現在発売しているテレマティクス保険に関して、ソニー損保は特許を申請中である。

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山田英夫 [早稲田大学ビジネススクール教授]

慶應義塾大学大学院経営管理研究科修了(MBA)後、三菱総合研究所にて新事業開発のコンサルティングに従事。1989年早大に移籍。学術博士(早大)。専門は競争戦略、ビジネスモデル。アステラス製薬、NEC、ふくおかフィナンシャルグループ、サントリーホールディングスの社外監査役を歴任。主著に『経営戦略 第3版』(共著、有斐閣、2016)、『競争しない競争戦略』(日本経済新聞出版社、2015)、『異業種に学ぶビジネスモデル』(日経ビジネス人文庫、2014)、『逆転の競争戦略:第4版』(生産性出版、2014)、『ビジネスマンの基礎知識としてのMBA入門』(共著、日経BP社、2012)などがある。


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企業を取り巻くビジネス環境が激変するなか、これまで自社の主流となってきたビジネスモデルを、根本から見直そうと考える経営者は増えている。しかし、単なる新製品・新事業開発に比べて、ビジネスモデルの再構築は、極めて難しいのが現実である。一方で、業界になかったビジネスモデルを構築し、着実に利益を稼ぎ、堅実な成長を遂げている企業も少なくない。なかには、表面的には競合他社と変わらないようなビジネスモデルを持っている企業もある。この連載では、様々な業界でビジネスモデルを巧みに構築している企業にスポットをあて、顧客や競合から見えている部分だけでなく、見えない部分にも目を配り、ビジネスモデルの「真の強み」を考察する。「どこに注意してビジネスモデルを構築したら良いかわからない」と悩む経営者諸氏には、ぜひ参考にしてほしい。

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