――最大の難関は?
「ちこりを知っている人が国内にほとんどいないことでしたね」
ごもっとも。名前も聞いたことがなく、食べたこともない野菜を買おうと思う人は、まずいない。
そこで編み出したのが、本社横の空き工場を利用してオープンした教育型観光施設「ちこり村」である。実際にちこりの生産現場を見せ、その美味しさをアピールし、関連商品を販売。地元農家の主婦グループに協力を仰ぎ、農家家庭料理レストラン「バーバーズダイニング」を開店して、四季折々の旬の野菜を使った料理を食べられるようにもした。
むろん、当初は集客にも苦労した。
年間30万人以上が来店する「ちこり村」。当初は集客に苦労したという
最近でこそ年間30万人以上の来客数を誇り、中津川市の新しい観光スポットとして人気を集めているちこり村だが、2006年のオープン当初は1日に十数名、客が来ればいい方だったという。それが今では、年間10億円規模の売上をあげるまでに成長し、ちこり村事業で約100人の雇用を生み出している。2027年にリニア中央新幹線が通れば、さらに盛り上がることも期待されている。
ちこり村と言えば、こんなエピソードもある。
ちこり村ブランドのおせち料理を企画・販売し始めたのは09年のこと。初年度の目標は1000セット。9月から販売を開始したものの、12月21日の時点で、まだ500セットの在庫が残っていた。年末まであと10日。ミーティングの直前まで、「この事業は今年限りでやめる」と、中田氏はスタッフに言うつもりだった。
――実際は……。
「逆のことを言っちゃった」
――えっ?
「担当者3人と私で話をしているうちに逆上してしまいまして、『まだ10日あるじゃないか!』と言ってしまったわけなんです。
ミーティングが始まる前までは、こんなヒヤヒヤするビジネスはやってられないなと思っていたんですよ、本当に。もう懲りた、と。しかし、スタッフの煮え切らない話を聞いているうちに気が変わりまして、『一生懸命やれ!』となった。そしたら……」
――そうしたら?
「1週間で完売しました」



