ほんの2年前まではジリ貧の状態であり、10パーセント増の販売予算でも困難だったのに──。営業部長の私は、正直青くなりました。各支店長に販売予算を納得させられるとは思えなかったからです。
しかし、そんな心配は杞憂でした。
スーパードライは売れに売れ、品薄状態が続いたのです。
樋口さんのすごいところは、通常ならどんなに高く見込んでも20~30パーセントの増産ですませるところを、50パーセントという前代未聞の増産に踏みきったことです。それでもまだ供給不足でしたが、この増産とそれに伴う設備投資により、スーパードライは一気にメジャーブランドへの階段を駆け上ったのです。
『アサヒビールで教わった 自分の壁を一瞬で破る最強の言葉』福地茂雄 著 三笠書房刊 1,400円+税結果、スーパードライは初年度に1350万函、2年目の88年に7500万函、そして89年には1億函を突破するという爆発的な売れ行きとなりました。
スーパードライの成功は、その商品力に加え、樋口さんの決断力によるところも大きかったのです。その決断の大本には、急激に高まる需要にも、何とかして応えようという強い意識が働いていたのだと思います。
売れている商品であれば、得意先がほしがるのはあたりまえ。
商談の際、納入期限や取引条件など、こちらの思いどおりにならないことも多くあるでしょう。得意先の担当者の中には、こちらが好条件を提示しているにもかかわらず、「もっと、もっと」と迫ってくる人もいるかもしれません。
しかし、それを愚痴っていても、何の解決にもなりません。
たとえ得意先が無理を言っても、それに応える努力は絶対に必要なのです。
客の「不条理」を受け入れると
次第にエスカレートしていく
営業マンが一番“しんどい”のは、得意先と会社との板挟みにあうことでしょう。
得意先が言ってくる条件を会社に持って帰ると「ダメだ」と突っぱねられ、それを得意先に伝えると「やってもらわないと困る」とゆずらない──そんな板挟みでつらい思いをしている人は多いと思います。
私も数えきれないほど経験しました。



