縮小する市場規模、クラフトビールブーム、海外メーカーの日本上陸。今、ビール市場は変革期を迎えている。これから日系大手2社がどう戦うのかは、左党ならずとも気になるところだろう。そんな業界の過渡期に、史上初めてとなるキリンとアサヒによるトップ対談が実現した。日本のビール市場の未来について、じっくり語り合った濃密な90分間をお届けする。(構成/「週刊ダイヤモンド」編集部 泉 秀一)
小路明善アサヒビール社長(以下、小路) いやぁ、今までなかったんじゃないですか、こんな対談。ビール業界が厳しい状況だから実現したんでしょうね。業界が変わろうとしているからこそ。
人口減少、少子高齢化、そして若者のお酒離れ……。こういう環境を考慮すれば残念なことですが、私はこのビール類市場のマイナストレンドが大きく変わることはないと思います。
ビール類市場が過去一番大きかったのが1994年で、714万キロリットル(課税出荷数量ベース)あったんですね。それが2014年には541万キロリットルになっている。25%減少しているのです。これはビール大手1社分の販売量が20年間でなくなってしまったことを意味しています。大変なことです。
布施孝之キリンビール社長(以下、布施) そうですよね。あらためて考えるとものすごい規模です。15年は業界全体で新商品をたくさん出しました。ブランドの派生商品や季節商品が多く、その数は14年の49アイテムに対し15年は約80に上ります。それでも市場は伸びない。消費者の需要を喚起できていないということですね。
小路 これまでわれわれは4社で激しいシェア争いをしてきました。しかし、ここまで市場が小さくなるとシェア争いという個社の戦略ではなく、どうすれば市場全体が伸びるかを真剣に考えないと共倒れになりかねません。
布施 うん。シェア争いではもう飯が食えませんよね。市場が縮小している中で、行き過ぎた水準の販促費を掛けてシェアを取りにいく。こうなると利益が目減りして、縮小均衡パターンになって誰も幸せになりません。
私は業界が苦しんでいる原因の一つに、われわれメーカーの商品開発があると思います。これまでの商品開発というのは、目先のシェアを気にして短期的になりがちなものが多かった。メーカー都合の商品開発になっていた部分があると思うんですね。
若者の酒離れといわれて久しいですが、われわれは20代・30代の心に刺さるような商品を生み出せてきたでしょうか。反省する必要があると思いますね。