スーパードライというトップブランド一本でアサヒビールは勝ち抜いてきた。この戦略はなぜ正しかったのか。アサヒビール元会長兼CEOの福地茂雄氏の最新著書『アサヒビールで教わった 自分の壁を一瞬で破る最強の言葉』から、ブランドとは何かを説いた「最強の言葉」をお届けする。

2本足、3本足で
成功している企業はあるか

福地茂雄(ふくち・しげお)
アサヒビール元会長兼CEO 1934年福岡県生まれ。57年アサヒビール株式会社入社。99年代表取締役社長就任。2001年、48年ぶりに国内ビール系飲料で年間トップシェア獲得。02年代表取締役会長兼CEO。07年相談役就任後は東京芸術劇場館長、日本放送協会会長、新国立劇場理事長などを務める。15年相談役退任。

「スーパードライの1本足打法で成長は続くのか?」──。

 1999年にアサヒビールの社長に就任した当初、いろいろな人からこのような指摘を受けました。

 スーパードライの快進撃は衰えることなく、98年には全体のビール出荷量でキリンビールを抜き、じつに45年ぶりに年間シェア1位に立ちました。しかし、スーパードライも87年の発売から、この当時で10年の時を経ていましたから、これまでのような勢いが続くとはかぎりません。

 だから、「足が1本では、リスクが大きすぎる。スーパードライで利益を上げているうちに、2本目、3本目の足を育てておく必要があるのではないか」という指摘を、周囲からたびたび受けていたのです。

 そのとき、私はこう切り返しました。

「では、2本足、3本足でどこの企業が成功しているでしょうか?」

 嗜好品は集約される──。

 複数のブランドを展開しても、最後はトップブランドに戻ってくるものです。1本足打法が正しい経営手法であるという哲学は、私の経験則から出てきたものです。