直近2期のクリスマス商戦は大成功なのに
「下降トレンド」はなぜ?

 任天堂の業績を語る上で避けられないのが、クリスマス商戦を中心とした季節変動の大きさである。次の〔図表 2〕は伝統的な手法を用いて、任天堂の季節変動を解析したものだ。

 〔図表 2〕の仕組みは至って単純だ。実際売上高の移動平均値を100%と置いてそれを青色の水平線として描き、それに対応するように四半期ごとの実際売上高を黒色の線で描いている。「実際」と「実際」を対応させたものだ。

 〔図表 2〕を見ると、赤色の楕円形で囲んだ上限のレジスタンス-ラインは150%~170%を漂い、下限のサポート-ラインは右下がりの傾向を示していることがわかる。右端にある11/6(11年6月期)では41%にまで低下している。

 そうした特徴を咀嚼した上で改めて〔図表 2〕で描かれている黒色の線を眺めると、任天堂は確かに毎年12月期にピークを迎えていることがわかる。クリスマス商戦が同社にとって、如何に稼ぎどきであるかを証明している。

 特に直近2期の09/12(09年12月期)と10/12(10年12月期)では、171%と168%と高い数値を叩き出しており、クリスマス商戦は大成功を収めてきた。任天堂の立場からすれば、〔図表 1〕で描かれた下降トレンドは、心外といえるだろう。

容易な分析手法は
「過大評価」と「過小評価」を生む

 〔図表 2〕は、会計などの専門知識がなくとも、容易に作図できる。それ故こうした図表が、企業やメディアのパソコン画面上で氾濫することにより、クリスマス商戦の出来不出来が一意的に評価されることになる。

 ところが、〔図表 2〕には重大な欠陥が見落とされている点に注意して欲しい。実際売上高を100%と仮定している点だ。

 現有の経営資源をフルに活用したときに達成される売上高を100%と仮定するのであればわかる。しかし、実際売上高が、常に経営資源をフル稼動させた状態と同等である、と仮定するのは誤りだ。

 本連載で再三指摘しているように、08年9月のリーマン-ショック以降、上場企業のほとんどが稼働率不足に見舞われている事実を忘れてはならない。〔図表 2〕において黒色で描かれている線は、「実際の稼働率(操業度率)」を表わしたものではないのだ。

 現実には稼働率が低迷しているにもかかわらず、実際売上高を100%と置いて作図すると、どうなるか。〔図表 2〕にある青色の線より上は「過大評価」となり、青色の線より下は「過小評価」となるのだ。ここはしばし考えて欲しいところである。

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予実対比でなければ意味がない

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