――解答です
今回の落とし穴は、「選好逆転」(厳密にいえば、「選好逆転の可能性の見落とし」)です。選好逆転とは、どの選択肢を選択するかが、その選択肢が提示された状況や順番などによって変化してしまう現象を言います。
選好逆転にはさまざまなパターンがありますが、よく知られているものとして、同時に提示するか、それとも別々に提示するかで、選好の結果が変わってくるという現象があります。
たとえばこんな実験結果が知られています。複数のサンプル集団に、3年契約の仕事の給与条件について、以下の2つの選択肢のうちの1つを見せます(数字は本コラム用に多少修正しています)。各サンプル集団は、極力似たような属性の集団とします。
パターン1:初年度給与800万円、2年度給与750万円、3年度給与700万円
パターン2:初年度給与700万円、2年度給与750万円、3年度給与800万円
パターン1だけを見せられたサンプル集団は、この選択肢を魅力的ではないと考えました。逆に、パターン2だけを見せられた各サンプル集団は、概ねこの選択肢を好意的に捉えました。「この条件で働いてみたいか?」との質問に対しては、パターン2だけを見せられたサンプル集団の方が、「働いてみたい」と答える比率が高いという結果となりました。
面白いのはこれからです。その後、各サンプル集団は、それぞれもう1つの選択肢を提示され、2つを比較した上でより好ましいと思う方を選ぶように指示されます。その結果、早い時期にキャッシュを得ることができるパターン1を選ぶ人間がほとんどとなったのです。
なぜこのようなことが起こるのでしょう? パターン1だけを見せられたとき、強烈に印象に残るのは、毎年給与が下がるという点でしょう。給与が毎年下がるというのは、通常はあまり好ましいことではありません。それゆえ、この選択肢単独では魅力的な選択に映らないのです。
しかし、パターン2と比較すると、額面の総額は同じで、しかも不確実性が低く時間的価値が高い初期の段階にキャッシュが手に入りますから、パターン1の方が実は有利な条件である(ファイナンスの言葉でいえば、NPV<正味現在価値>が高くなっている)ことに気がつくのです。



