陥りがちな思考の罠に迫る「カイゼン!思考力」。今回は、「無相関と弱い相関の混同」を取り上げる。

――問題です

 以下のAさんの問題は何か。

A「僕は、出身大学の偏差値というか、学校の勉強ができるかできないかということと、仕事ができるできないは無関係だと思うね。さらに言えば、学歴と仕事の能力も無関係だと思う」

B「それはさすがにありえないだろう。じゃあなぜみんな苦労してまで、より良い大学に行こうとするんだい?」

A「それは皆が勘違いしているんだよ。良い学校に行けば仕事もできるとみなされて給料の良い仕事にありつけるだろうってね」

B「でも、実際に偏差値が高い学校の人間の方が仕事はできるんじゃないのか。事実、大企業の社長や官僚なんかは世間で言う良い大学の出身者が多い」

A「それは一面的なものの見方だよ。実際、大学を出ていなくても世の中には仕事ができる人はいくらでもいる。ウチのC課長だって高卒だけど、間違いなく取締役になるはずさ。ひょっとしたら社長になるかもしれない」

B「たしかにC課長は優秀だけど、彼は例外という気もするしなあ」

A「逆に、Dさんは超有名大学を出ているけど、絶対に出世しそうにないじゃないか」

B「まあ、そうだけど」

A「有名どころだと、スティーブ・ジョブズだって、決して有名な大学に行っていたわけではないし、しかも結局中退したから、学歴でいえば高卒ということになる。しかし、アップルを時価総額1位の企業に復活させた。ときどき『こんな時代に彼のような政治家がいれば』と待望論がでる田中角栄だって、高校すら出ていないけど、東大出身の官僚たちを自在に使いこなした」

B「うーん」

A「いずれにせよ、学校のお勉強と仕事の能力には本質的には関係なんてないんだよ」