ティールとトランプファミリーとの関係
長くなってしまったが、最後にティールとトランプファミリーの関係について、ラッポルトが興味深い事実を明かしているのでそれを書いておこう。
トランプの娘イバンカとその夫のジャレッド・クシュナーはもともとティールをよく知っていた。それはジャレッドの弟ジョシュアがシリコンバレーのスタートアップ、オスカー・ヘルスの創業者だからで、「非効率な米国のヘルスケアをスリムでユーザーフレンドリーなものにする」ことを目指すこのベンチャーにティールはかなりの額を投資している。
トランプの「デジタル選挙」を仕切ったのがクシュナーで、そのバイブルはティールの『ゼロ・トゥ・ワン』だった。「何かあるとシリコンバレーの友人に電話で相談し、適当な会社を紹介してもらいました」と雑誌『フォーブス』の取材にこたえている。
クシュナーはシリコンバレーのスタートアップのやり方で、100人のスタッフを擁するデジタル選挙事務所を3週間でサンアントニオの郊外に開設し、グーグルマップを使って選挙戦に役立つあらゆるデータを収集した。寄付金を集めるために、これまで行なったキャンペーンの有効性を、AIによる機械(深層)学習を使ってデジタルマーケティング会社に分析させ、4カ月で2億5000万ドル以上を集めた。
とりわけ興味深いのは、以下の記述だろう。
選挙分析の中心となったのはケンブリッジ・アナリティカ社だ。ブレグジットの際に勝者側が雇ったことで名をはせた選挙コンサルティング会社である。同社の背後には、ヘッジファンド億万長者のロバート・マーサーがいる。彼は、トランプ政権の元上級顧問スティーブ・バノンが率いる右派のオンライン・ニュースサイト、ブライトバートを支援している人物だ。
ケンブリッジ・アナリティカは、ファイスブックから膨大な個人データを不正に取得し、それをトランプの選挙活動に利用していたとして廃業を余儀なくされた。この疑惑でマーク・ザッカーバーグは米議会での謝罪に追い込まれ、フェイスブックの株価も急落した。だがこの問題はこれで終わるのではなく、シリコンバレーの大物たちを巻き込んでまだまだ尾を引きそうだ。
橘 玲(たちばな あきら)
作家。2002年、金融小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)が30万部の大ヒット。著書に『「言ってはいけない 残酷すぎる真実』(新潮新書)、『国家破産はこわくない』(講談社+α文庫)、『幸福の「資本」論 -あなたの未来を決める「3つの資本」と「8つの人生パターン」』(ダイヤモンド社刊)など。最新刊は『橘玲の中国私論』の改訂文庫本『言ってはいけない中国の真実』(新潮文庫)が好評発売中。
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