住宅ローン相談室
【第19回】 2018年9月19日公開(2018年9月24日更新)
バックナンバー 著者・コラム紹介
淡河範明

東京の年収700万円台世帯は住宅ローン破綻必至!?
「背伸び消費」で、貯金はわずか月2万円弱!
変動金利が1.5%上昇しただけで、家計は火の車

現在、変動金利は0.5%を切る史上空前の超低金利状態です。しかし、変動金利は銀行が金利を引き上げることのできる商品。ひとたび金利上昇局面となれば、毎月返済額がアップし、余裕のない家庭は住宅ローン破綻をしかねません。今回調べてみたところ、特に東京都では平均的ともいえる年収700万円台世帯に「破綻予備群」が多く潜んでいることがわかりました。その理由と対策を、住宅ローンのプロである淡河範明氏が解説します。

首都圏、特に東京の人は、
身の丈以上の家を買っている!?

都会のマンション群(本文と関係ありません)都会のマンション群(出典・PAKUTASO)

「大企業の社員で世帯年収700万円超なら、中流階級よりは上のポジションだろう」。もし、あなたが東京で住宅を購入しようとしていたり、すでに住宅ローンを返済中だとすれば、こうした考えはすぐに改めるべきです。

 厚生労働省の「平成29年国民生活基礎調査」によれば、国内の世帯年収の平均は560万円ですから、700万円台といえば、ずいぶんゆとりがあるように思われるかもしれませんが、560万円は収入の少ない高齢者世帯や単身世帯、地方都市で暮らす世帯も含んでのものです。

 また、東京の物件は地方に比べて、驚くほど高額です。東京カンテイの調べでは、2017年度の首都圏の新築マンション1戸当たりの平均価格は5544万円。近畿圏3933万円、中部圏4049万円と比べて、約1500万円も高くなっています。新築一戸建てについても、首都圏の平均価格3999万円に対して、近畿圏2982万円、中部圏3055万円と、約1000万円違います。

 東京に限れば、地方の物件との価格差はさらに広がるでしょう。その分、東京で家を買うと、住宅ローンの借入額が膨らみ、金利変動リスクを受けやすくなるのです。

 「東京の人は稼ぎがいい分、頭金も多く出せるから、それほど借入額は膨らまないでしょ?」という声も聞こえてきそうですが、次の表をご覧ください。頭金と関係の深い、勤労世帯の貯蓄額のデータです。

 都道府県別1世帯当たりの貯蓄現在高(2人以上の世帯うち勤労世帯)
※総務省統計局「平成26年全国消費実態調査」より
順位 都道府県 貯蓄現在高
1 福井県 1601万円
2 香川県 1438万円
3 愛知県 1428万円
4 東京都 1418万円
5 富山県 1416万円
6 神奈川県 1402万円
7 岐阜県 1391万円
8 島根県 1377万円
9 滋賀県 1372万円
10 三重県 1336万円
23 長野県 1157万円
26 大阪府 1031万円

 周知のとおり、東京は平均世帯収入では全国1位ですが、貯蓄額では全国4位に下がります。親との同居率や教育費、物価などの違いにより、福井県や香川県よりも下位なのです。23位の長野県とは261万円、26位の大阪府とも387万円しか違いません。そのため、家を購入する際の頭金額はさほど変わりがありません。

 前記したとおり、首都圏と近畿圏、中部圏との新築物件の価格差は1000万以上ありますから、東京で家を買う場合、住宅ローンの借入額が膨らみやすいことがお分かりになると思います。借入額が大きければ、金利変動の影響を受けやすく、当然リスクも高くなります。

 このように、東京で家を購入する人は地方の人よりも無理をしているケースが多いということです。そのため、物件を購入した時点から破綻に近い位置に立たされているのです。

年収700万円台の世帯は、
毎月の貯金額がわずか2万円弱

 こうした東京の中でも、金利上昇時に特にダメージを受けやすいのが、世帯年収700万円台の人たちです。以下は、総務省統計局「家計調査」から、「関東大都市圏の2人以上の世帯のうち、住宅ローンを返済中の勤労者世帯(2017年)」の平均的な家計を抽出したものです。

 東京で「年収700万円台」は、住宅ローン金利上昇で家計は赤字になりやすい!?
平均年収 勤め先収入
(毎月)
住宅ローン返済額
(毎月)
借入金残高
(推定)
預貯金純増額
(毎月)
 
年収400万円台世帯
(平均443万円、Ⅰ階級)
36万円 8.4万円 2842万円 2.2万円
年収600万円台世帯
(平均606万円、Ⅱ階級)
47万円 8.4万円 2814万円 4.7万円
年収700万円台世帯
(平均745万円、Ⅲ階級)
51万円 10.7万円 3604万円 1.7万円
年収900万円台世帯
(平均913万円、Ⅳ階級)
73万円 10.7万円 3593万円 9.1万円
年収1300万円台世帯
(平均1370万円、Ⅴ階級)
97万円 13.8万円 4641万円 11.7万円
※ 家計収支(2017年)の「関東大都市圏の2人以上の世帯のうち、住宅ローンを返済中の勤労者世帯」より作成。集計世帯数は合計280世帯で、Ⅰ階層からそれぞれ41世帯、49世帯、56世帯、69世帯、65世帯と一定数のサンプルを集めている。
※「勤め先収入」以外に、たとえば内職などの収入があるため、12倍しても「年収」とはならない。
※ 表中の「借入金残高」は筆者の推定値。残りの住宅ローン期間30年の前提で、ネット銀行の現在の変動金利(表面金利)0.457%で借りているとして算出。

 この統計は、世帯年収別に5つのグループに分かれています。それぞれ50世帯程度を調査した平均なので、かなり正確な調査だといえるでしょう。分かりやすくするため、年収「400万円台世帯」「600万円台世帯」「700万円台世帯」「900万円台世帯」「1300万円台世帯」と呼ぶことにします。ここから意外なことが2つ分かりました。

 まず注目してほしいのは、「年収400万円台世帯」です。毎月の住宅ローン返済額は約8.4万円なので、平均世帯主の年齢43歳という前提から住宅ローン借入金残高を試算してみると2842万円となりました(残りの返済期間30年、借入金利0.457%と仮定)。次に、「年収600万円台世帯」を見てみると、毎月の住宅ローン返済額は同じ8.4万円で、借入金残高はほぼ同じ2814万円となりました。

 これは年収400万円台世帯が、かなり背伸びをしていると言えるのではないでしょうか。その結果、毎月の預貯金額は2.2万円しかありません。年収600万円台は4.7万円も貯金をしているのに比べると、かなり余裕がないことが分かります。

 そして、もっと際どいのが「年収700万円台世帯の台世帯」です。「700万円台世帯」と「900万円台世帯」は、どちらも住宅ローン返済額は約10.7万円であり、借入金残高は約3600万円と試算できました。「700万円台世帯」は背伸びをして、一つ上の年収世帯と同じグレードの物件を購入していますね。

 結果として、「700万円台世帯」の毎月の貯金額はわずか1.7万円でした。900万円台世帯の貯金額は9.1万円もあるのに比べて、余裕がないことが分かります。変動金利が上昇すれば、たちどころに家計は赤字に転落します。

 700万円台世帯に余裕がないのは、住宅ローン以外の消費についてもかなり「背伸び」をしていることが理由として挙げられるでしょう。この年収以上になると、見栄なのか自動車を購入するようになり、自動車等関係費は毎月2.7万円もかかります。子どもを塾や習い事に通わせるため、教育費も月3万円かかっています。

 このように考えていくと、借入金残高が多くて金利変動リスクを受けやすく、加えて毎月の貯金額の少ない「700万円台世帯」がいかに危険な状況に立たされているか、ご理解いただけるのではないでしょうか。

 「一億総中流」とよく言われますが、東京で家を買うなら、そうした甘い認識は奈落への第一歩です。「400万円台世帯」と「700万円台世帯」では、言うまでもなく使えるお金が多いのは後者ですが、生活レベルを落としづらいのも後者です。

 「子供を有名私立校に通わせたい」「ブランド品を買うくらいの贅沢はしたい」「車は〝軽〟で十分だけど、やっぱり〝MINI〟がいい」。「300万円台世帯」であれば、検討する余地はありませんが、「700万円台世帯」だとこうした生活が選択肢に入ってきます。そのため、つい浪費してしまい、毎月の預貯金額が2万円にも満たないのです。

 なお、「貯金額」=「自由になるお金」があれば、金利上昇の防波堤となります。いくら金利が上がっても自由に使えるお金が十分にあれば、いざというときに返済に回せるからです。しかし貯金が少ない場合、以下に見るように家計が赤字に転落すれば、下手すれば住宅ローン破綻をしかねません。

2%程度の金利上昇で
家計が赤字=住宅ローン破綻の可能性も!

 では、東京を中心とした関東大都市圏の「400万円台世帯」「700万円台世帯」の家計が赤字に転落するのはどんなケースでしょうか。それには、毎月の預貯金純増額がマイナスになる条件を確かめれば分かります。

 下記がそのシミュレーション結果です。黄色の部分が、預貯金純増額がマイナスになるケースです。(5年特約はないものとして計算しています)

「毎月支払額」は金利上昇でいくら増加?
  東京の年収400万円台は、2%上昇で破綻も!

※ 黄色背景は2.2万円(毎月の預貯金額)を上回るケース
  毎月支払額はいくら増加?
金利1.5%上昇
(1.957%)
金利2%上昇
(2.457%)
金利2.5%上昇
(2.957%)
金利3%上昇
(3.457%)
1年後に
金利上昇
+1万9257円 +2万6217円 +3万3439円 +4万918円
2年後に
金利上昇
+1万8570円 +2万5266円 +3万2209円 +3万9393円
3年後に
金利上昇
+1万7885円 +2万4319円 +3万984円 +3万7874円
4年後に
金利上昇
+1万7202円 +2万3375円 +2万9763円 +3万6362円
5年後に
金利上昇
+1万6520円 +2万2434円 +2万8548円 +3万4859円
6年後に
金利上昇
+1万5839円 +2万1496円 +2万7338円 +3万3362円
7年後に
金利上昇
+1万5160円 +2万562円 +2万6134円 +3万1874円
8年後に
金利上昇
+1万4483円 +1万9630円 +2万4934円 +3万393円
9年後に
金利上昇
+1万3808円 +1万8702円 +2万3741円 +2万8921円
10年後に
金利上昇
+1万3134円 +1万7778円 +2万2552円 +2万7456円
11年後に
金利上昇
+1万2462円 +1万6856円 +2万1370円 +2万6001円
12年後に
金利上昇
+1万1791円 +1万5939円 +2万193円 +2万4553円
13年後に
金利上昇
+1万1123円 +1万5024円 +1万9022円 +2万3115円
14年後に
金利上昇
+1万456円 +1万4114円 +1万7857円 +2万1685円
※家計収支(2017年)の「関東大都市圏の2人以上の世帯のうち、住宅ローンを返済中の勤労者世帯」をベースに、以下の前提でシミュレーション。変動金利:0.457%/残債:2842万円/毎月の預貯金純増額:2万2214円/残り借入期間:30年

「400万円台世帯」であれば、現在の金利よりも5年以内に2.0%上昇するか(変動金利2.457%)、10年以内に2.5%上昇するか(変動金利2.957%)、13年以内に3.0%上昇すると(変動金利3.457%)、家計が赤字化します。

 続いて「700万円台世帯」です。

「毎月支払額」は金利上昇でいくら増加?
  東京の年収700万円台は、1.5%上昇で破綻も!

※ 黄色背景は1.7万円(毎月の預貯金学)を上回るケース
  毎月支払額はいくら増加?
金利1.5%上昇
(1.957%)
金利2%上昇
(2.457%)
金利2.5%上昇
(2.957%)
金利3%上昇
(3.457%)
1年後に
金利上昇
+2万4416円 +3万3240円 +4万2398円 +5万1881円
2年後に
金利上昇
+2万3546円 +3万2036円 +4万838円 +4万9946円
3年後に
金利上昇
+2万2677円 +3万835円 +3万9285円 +4万8021円
4年後に
金利上昇
+2万1810円 +2万9638円 +3万7737円 +4万6104円
5年後に
金利上昇
+2万945円 +2万8445円 +3万6197円 +4万4198円
6年後に
金利上昇
+2万83円 +2万7255円 +3万4663円 +4万2300円
7年後に
金利上昇
+1万9222円 +2万6070円 +3万3135円 +4万413円
8年後に
金利上昇
+1万8363円 +2万4890円 +3万1615円 +3万8536円
9年後に
金利上昇
+1万7507円 +2万3713円 +3万101円 +3万6669円
10年後に
金利上昇
+1万6653円 +2万2541円 +2万8594円 +3万4813円
11年後に
金利上昇
+1万5801円 +2万1373円 +2万7095円 +3万2967円
12年後に
金利上昇
+1万4951円 +2万209円 +2万5603円 +3万1131円
13年後に
金利上昇
+1万4103円 +1万9050円 +2万4118円 +2万9307円
14年後に
金利上昇
+1万3258円 +1万7895円 +2万2641円 +2万7494円
15年後に
金利上昇
+1万2414円 +1万6745円 +2万1172円 +2万5693円
※家計収支(2017年)の「関東大都市圏の2人以上の世帯のうち、住宅ローンを返済中の勤労者世帯」をベースに、以下の前提でシミュレーション。変動金利:0.457%/残債:3604万円/毎月の預貯金純増額:1万7186円/残り借入期間:30年

 「700万円台世帯」の場合、8年以内に1.5%(変動金利1.957%)、14年以内に2.0%(変動金利2.457%)、17年以内に2.5%(変動金利2.957%)、19年以内に3.0%上昇すると(変動金利3.457%)、同じく赤字化します。

 後述するように、この程度の金利上昇は「ない」とは言い切れない数字です。また、シミュレーションの前提より借入額の多い人や、これから新規借入をする人はさらに金利上昇の影響を受けやすくなるため、よりリスクは高まります。

【関連記事はこちら!】
>> 住宅ローンを変動金利で借りている人でも、借り換えで最大300万円近くもうかる! 多くの人が「高い変動金利」で借りているので注意!

変動金利の1、2年内の上昇リスクは低いが、
10年スパンでは、上昇する可能性のほうが高い

 気づいていない人も多いようですが、この10~15年の間にかなり金利が下がりました。たとえば、ソニー銀行の変動金利(表面金利)は「2008年8月:1.812%」→「2018年8月:0.457%」と、約1.3%下降。三菱UFJ銀行は「2009年8月:1.675%」→「2018年8月:0.525%」と、約1.1%下がっています。

 2018年9月、大手4行が相次いで住宅ローン金利を一部引き上げましたが、これは10年固定等の固定金利型の商品です。後述するように、固定金利と変動金利ではかなり異なった動きをします。事実、変動金利については、この10年間は金利を上げた一度もことはなく、いまだに金利を下げているところもあるくらいです。

 とはいえ、ミスプライスともいえるような異次元の低金利がいつまでも続くとは思えません。銀行の体力が持たないからです。これからの10年で、10年前の金利水準、もしくはそれ以上の金利上昇が起こる可能性は高いと覚悟しておいたほうがいいでしょう。

 特に先ほどシミュレーションで見たように、大都市圏の「700万円台世帯」の破綻ボーダーラインのひとつ、「8年以内に金利1.5%上昇」は、現実に十分起こり得るシナリオです。

【関連記事はこちら!】
>>変動金利の住宅ローンは、金利が何%まで上昇すると考えれば破綻しないでむのか?

金利タイプの変更や借り換えで
住宅ローン破綻を回避!

 では、こうした破綻リスクの高い世帯は、どのような対策を取ればいいでしょうか。最善策は金利タイプの変更や借り換えです。ポイントは次の3つです。

ポイント①「金利タイプの変更や借り換えを前提に、ターゲット(乗り換え先)を決める」
ポイント②「金利を定期的にチェックする」
ポイント③「あらかじめ決めた金利まで上昇したら、金利タイプの変更または借り換えを行う」

 ここで大切なのは、〝機〟を逃さないようにするために、あらかじめ金利がいくらになったら、金利タイプを変更するかを決めておくことです。

 先ほど、変動金利と固定金利の動きは異なるとお話ししましたが、金融の世界では、固定金利が先に上昇し、その後変動金利が上昇するというのが常識です。実際、2016年8月以降、10年以上の金利は上昇しはじめていますが、前記のとおり、変動金利はいまだに引き下げている銀行もあります。

 そのため、「変動金利が上がりはじめたら固定金利に乗り換えよう」と気軽に構えていると、時すでに遅しということになりかねません。変動金利が上がりはじめたときには、固定金利はとっくに上がってしまっている可能性が高いからです。

 そのため、実際に変動金利が上昇してから固定金利に乗り換えようとすると、現状より相当高い金利に乗り換えざるを得なくなるでしょう。たとえば、その時点で変動金利が1%になったとしても、2%超の固定金利に乗り換える決断は、将来のリスクを回避するためだと頭ではわかっていても、なかなかつかないものです。だから、事前に金利がいくらになったら、変更するかを決めておくことが大切なのです。

 付言すると、2018年9月現在のフラット35の最頻金利は1.39%です。2008年時のソニー銀行、三菱UFJ銀行の変動金利よりも低くなっています。10年、20年単位で見ると、現在の固定金利はかなりおトクといえます。

 金利の動きは、私たち専門家でもなかなか読み切れません。バブル時代の変動金利は8%台。当時、現在の低金利を予測できた人は皆無でしょう。仮に先を見通せたとしても、金利の上昇期には、銀行員は決して「今が変え時です」と声をかけてはくれません。

 預貯金が少ない世帯ほど、金利上昇に備えなければなりません。現在の金利水準であれば、固定金利への切り替えは「早すぎる決断」とはならないと私は考えますが、皆さんはいかがお考えでしょうか。

【関連記事はこちら!】
>>住宅ローンの変動金利が上昇したら、いくら繰上返済すべきか、借入金額別に診断!

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「住宅ローン借り換えクリニック」代表・淡河範明
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