• グローバル化の反転

 投資家は、米中の貿易合意に向けた動きに神経質になっているが、米国のトランプ大統領と中国の習近平国家主席が合意に達したとしても、世界が以前の状態に戻るわけではない。世界の貿易システムは再調整されつつある。国境を越えた自由貿易に向けた数十年にわたる流れは反転を始めた。グローバル化は、大衆迎合主義、国家主義、さらに保護主義に圧倒されつつある。

 英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)は、英国とその他欧州の間の新たな貿易障壁を構築する恐れがある。インドは、海外事業者によるオンライン販売の制限を始めた。

 自由貿易という世界的な共通認識が薄れるにつれて、米国企業はサプライチェーンの修正を迫られ、往々にして最終市場に近い場所へサプライヤーを移している。コンサルティング会社のベイン・アンド・カンパニーが行った、中国で事業を行う多国籍企業の200人超の幹部に対するアンケートによると、60%が最近の貿易戦争が事業戦略の修正機会になったと回答し、48%が今後1年間で新たなサプライヤーを見つける予定で、42%は原材料の供給先を中国以外に求めると回答した。

 企業経営者は、グローバル化がもはや支配的ではない世界への対応を始めている。電動工具メーカーのスタンレー・ブラック・アンド・デッカー(SWK)の最高財務責任者(CFO)であるドン・アラン氏は、「これまでであれば、グローバル化が終わるとは決して言わなかっただろうが、現在はその方向に向かっているようにみえる。各国が自国の保護に一段と焦点を当てている。過去10年間で確実に大きな変化があり、しかも過去5年間で加速している」と語る。

 変化は、テクノロジーと政治の顕著な変化と同時に起こっている。例えば、新たなロボットによる生産技術、北米のエネルギー・ブーム、中国の国家主導の高付加価値製品の販売推進により、企業は世界での展開を再考し、調整している。

 これらの変化は、成果が得られるまでに数十年かかる可能性があるため、投資は慎重を要する。再生可能エネルギーやバッテリーを含む中国の新規投資で恩恵を受ける可能性のある銘柄や、ベトナムなどの世界貿易における役割が高まる諸国、および生産に使われるロボットを製造する企業などに投資することで、サプライチェーンの移転から利益を上げられる可能性がある。

次のページ

グローバル化の功罪

TOP