世界のライバルは超大企業
日本企業は団体戦で勝負だ!
鉄道の受注には「DBOM」という要件があります。Dはデザイン(設計)、Bはビルド(製造)、Oはオべレーション(運行)、Mはメンテナンス(保守)のことです。
これから本格的に近代的な鉄道を敷設していこうという国では「車両だけでなく運行や保守管理についても協力して欲しい」という要望があります。アルストムやシーメンスは鉄道会社との関係が密接で、DBOMの一括受注を得意としています。
ところが、日本の車両メーカーには運行と保守のノウハウがなく、それに応えようと思えば鉄道会社(JRなど)の協力が不可欠です。が、鉄道会社にはあまり海外進出に乗り気なところはないようで。このあたりを上手に取りまとめるスキームが欲しいところです。
成功例は「台湾高速鉄道」(00年・受注総額3320億円)で、川崎重工(7012)、東芝(6502)、三菱重工(7011)、三菱商事(8058)、三井物産(8031)、丸紅(8002)、住友商事(8053)が「7社連合」としてタッグを組み、日本車輌(7102)、日立製作所(6501)、京三製作所(6742)、日本信号(6741)、東芝プラント建設(1983)、新日鉄など多くの日本企業が関わりました。運行ノウハウはJR西日本(9021)とJR東海(9022)が協力しました。
今年5月には川崎重工(7012)と東芝(6502)が、台湾高速鉄道から「700系新幹線」ベースの車両4編成48両を受注(受注総額190億円・推定)しましたが、これは00年の納入実績が評価されたということです。いい関係を築くと、後々ビジネスがつながるのですね。
もう一つの成功例(受注競争に勝ったという意味で)は、ドバイの「ドバイメトロ」(09年・当初3000億円)で、三菱商事(8058)、三菱重工(7011)、大林組(1802)、鹿島建設(1812)、Yapi Markezi(トルコのインフラ企業)の企業グループが受注しました。車両は近畿車輛(7122)製、受配電設備は明電舎(6508)が納入しています。
成功例にカッコをつけたのは、度重なる設計変更や追加工事、支払い遅延などで一部企業が損失を出してしまったからです。日立が受注した英国高速鉄道も一時凍結があったように、巨額かつ長期に渡る事業ですから、受注する企業にとってもリスクがあります。ブレに耐えられるだけの規模や財務上の体力が求められます。
ちなみに完全な失敗例は、中国高速鉄道です。川崎重工(7012)が「はやて」ベースの車両を納入し、JR東日本が運行ノウハウを提供したところ、技術をパクられたばかりか「我々が独自技術で造り上げた」とか言いたい放題言われ、追突脱線事故の責任まで取らされそうになりました。売り込む相手は選ばなくてはいけませんね。
トップセールスにも期待したいが
こうもコロコロ交代しては…
多くの国で鉄道事業は国家プロジェクトです。相手は相手国の政府や省庁なわけですから、渡り合う企業としても国の後押しやお墨付きが欲しいところ。フランスのサルコジ前大統領や韓国の李明博大統領は、モーレツなトップセールスで自国の鉄道を売り込み、成果を挙げてきました。
日本も!と思うのですが、ここ数年は、麻生総理、鳩山総理、前原国交相、前田国交相などが諸外国にアピールしてくれたものの、次の機会が訪れる前に辞職しているので継続しないのが残念です。
鉄道建設には多額の費用がかかるので、どこも財源確保には苦労します。資金面での支援は強力な援護射撃になると思われます。
例えば「STEP付き円借款」は、本体契約額の30%以上は日本の技術を活用することを条件に、資金援助を行う制度です。インドの貨物専用鉄道建設計画や、ベトナム・ホーチミン地下鉄の高架土木工事にこのスキームが活用されました。
あるいは、日立が受注した英国の高速鉄道プロジェクトでは独立行政法人・日本貿易保険(NEXI)が、三菱UFJ銀行やみずほコーポレート銀行など邦銀5行に対して「海外事業資金貸付保険」の引受元となり、資金面で後押ししています。
原発が輸出しづらくなってしまった以上、これからは鉄道が日本のインフラ輸出の柱になってくれたらと思います。では「鉄道輸出関連株」にはどんな企業があるのか、見てみましょう。
鉄道輸出関連株のまとめ!
“鉄分”の多い銘柄を探せ
車両メーカーが中心になります。英国で高速鉄道車両を受注した日立製作所(6501)(6501)はスゴイのですが、何せ大きな会社です。鉄道関連分野の売上高は信号運行系システムと車両海外保守を合わせても1330億円で、全体の売上高(9兆1000億円)に占める割合だと1.5%程度に過ぎません。
日立製作所(6501) 週足3年チャート
海外への売り込みでは川崎重工(7012)が最も熱心に見えます。米国市場には1979年から進出しており、ニューヨーク市営地下鉄やロングアイランドを走る通勤車両は、同社のネブラスカ州工場などで造られたものです。売上高に占める鉄分(鉄道車両関連の割合)は10.2%と大企業の中では高め。今後は時速350kmの海外向け新型高速鉄道車両「efSET(イーエフセット)」がどこに採用されるのか楽しみです。



