セクシー・ボリンジャーはお見通し!

それでもJAL株、買いますか?
優待目当てのほったらかし投資はもうやめよう

【第14回】 2012年9月10日公開(2017年12月6日更新)
ワタナベくん
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再上場となるJAL株の売出価格が3790円に正式決定、いよいよ19日から取引が開始されます。売買代金がやせ細る中での超大型上場に「JAL株を買う資金を捻出するために他の銘柄が売られるのでは」など悪影響が懸念される一方、フラッグキャリアの復活や株主優待制度に期待を寄せる声も。はたして新生JALは買いなのか!?
 

2011年4月から往年のロゴマーク「鶴丸」を復活したJAL(画面後ろに見えるのは旧デザインの機体)。創業当時の精神に立ち返り、挑戦する精神・決意が込められているという。(撮影/ワタナベくん)

 

債務を棒引き、旧株券を紙クズにして
生まれ変わったJALが帰ってくる!

 2012年9月19日、JAL(9201)が株式市場に帰ってきます。上場廃止が2010年2月19日でしたから、2年7カ月で一通りの再建が完了したことになります。

 「日本の空の利権を握っている国が形振り構わずテコ入れすれば、何だってできるわい」という厳しい指摘もあります。実際、JAL(9201)2018年度まで9年間も法人税を払わなくていいなどの恩恵に与かります。

 「JAL(9201)が株式市場に帰ってくる」と書きましたが、紙くずになった株が復活するわけではありません。今回の上場で売り出される1億7500万株(発行済み株数の96.5%)は、100%減資の後に発行された、企業再生支援機構が保有する株です。同機構は公的資金を3500億円注ぎ込みましたが、今回の売り出しによって約6900億円が回収できる見込みです。

「国が大儲けしてけしからん」という批判もあるみたいですが、公的資金は国民のお金ですから、ちんたらリスクに晒しておくべきではありません。是非はともかく支援をすると決めた以上は打つべき手を打ってちゃっちゃと再上場し、リスクを承知でお金を出してくれる株主に引き取ってもらうというのは、あるべきスキームではないでしょうか。

 問題は、この株が市場に出てきた後です。われわれ個人投資家はJAL(9201)を買うべきかどうか、株価は上がるのか否かです。  

売買代金1兆円/日の市場に
6600億円のIPOは重すぎる…

 筆者のまわりでは「JAL(9201)の株を買いませんかって、珍しく証券会社から電話がかかってきたよ」と言う人が結構います。普段から投資信託や国債を買っている人ならわかるのですが、口座がほったらかしにしてるような人にも電話がかかってきているみたいです。

証券会社が口座を放置してるお客さんにわざわざ電話を掛けてきて、儲けさせてくれるなんて美談がどこにありましょうか。要するに、あまりに大量の株がどーんと放出されるので、売りさばくのに苦労していたのです。

 当たり前ですが、株価は「昨日より高くても今日買いたい、今日より高くても明日買いたい」という人が続いてこそ上がるものです。割安に設定されているはずの公募価格ですらダブついているとすれば、上場後に買いたい人がどれほど残っているでしょうか。

 また、最近の東証の売買代金は、1兆円を割り込む日が珍しくありません。そうした中で、半分以上の6600億円がJAL(9201)株に吸い上げられてしまうわけです。その後でさらにガンガン買い上げられていく風景は、ちょっと想像できません。

 そうすると当面株価は動かないか、しびれを切らしてじわじわ売られてしまうかどちらかではないかと予想してしまいます。ハズれたらごめんなさい。

 それでも「俺は長期投資だからいいんだよ」「多少下げても株主優待でモトを取るよ」「さすがに倒産は二度はないだろう」という根強いファンもいます。

 個人的にはなんで「長期投資だから大丈夫」と思うのか本当にわからないですし、潰れるわけないというところが潰れたのがほかならぬJALではなかったかと思うのですが。

株主優待の内容はこの通り!
長期保有すると追加もある

 微妙なのは「株主優待」を目当てに買いたい人です。旧JAL株の株主優待券は1枚につき片道一区間50%割引(マイルも75%換算で貯まる)になるというもので、結構なおトク度でした。高額のチケットを買う人ほどメリットが大きく、天下のJAL(9201)が潰れるわけないという妙な安心感と相まって「最後まで見切りが付けられなかった」という人がたくさんいました。

 新JAL株にも株主優待券はあります。内容はJALグループ各社の国内全定期航空路線について、大人普通運賃(小児の場合は小児運賃)1名分の片道1区間が、株主優待券1枚に付き50%割引で搭乗可能というもの。権利発生日は3月31日と9月30日の年2回です。

 図版作成:ザイ・オンライン編集部

 これに加え長期で保有する株主に追加の特典も設定されています。同社の「新規上場申請のための有価証券報告書」によると、「3年(7基準日)連続で株主名簿に記載されている株主に対しては、以下の基準により、追加で株主割引券を配布する」となっています。

図版作成:ザイ・オンライン編集部

 

 航空券の価格は、時期によっても購入するタイミングによっても変動するので一概に「いくらおトク」とは言えないのですが、先ほどJALのサイトで10月の羽田―沖縄の普通席運賃を調べたら、片道4万970円と出てきました。もし優待券があれば2万485円の割引になります。

 一方、この優待券を手に入れるために必要な投資額は、公募価格で買ったとして37万9000円です。利回りに換算すると5.4%もあるのでおトクと言えなくもないのですが、株価がこれより下がらない保証はどこにもありません。

 それに、株主優待券は金券ショップでも買えてしまいます。ネットで調べたところ、同じく運賃が50%割引になるANAの株主優待券は、現在6600円前後で売られているようです。おそらくJAL(9201)の株主優待券も同じくらいになるでしょう。

 株を持っていれば株価が値下がりして損してしまうかもしれません。もちろん値上がりする可能性もあるわけですが、長期で持っていれば大丈夫という根拠はどこにもありません株主優待券が欲しいだけなら、そんな一か八かに賭けなくても金券ショップで買うほうがいいと思います

 なお、株主優待の権利は3月と9月ですが、この制度が実施されるのは来年の3月からです。ますます「早く買わないと」と焦る理由はありません。
 

国が仕切りすぎるとロクなことなし
健全な競争と成長は期待できない?

 個人的には長期で考えても、現状では空運株にはあまり魅力を感じません。この業界に、健全な競争があると思えないからです。

 そもそも、国がぽこぽこ地方空港を作って、作った以上は定期便がなければというので赤字路線を設定させて、それがJAL(9201)の経営を悪化させた原因の一つだったことは誰でも知ってることです。

 それと引き換えに国はドル箱路線の発着枠とか与えてきたわけですが、航空業界は国内だけでなく世界を舞台にした戦いでもあるわけです。そうした利権や保護は、じわじわと企業の競争力を損なわせていくと思うのです

JAL(9201)は今回の再上場でカタチの上では国の手を離れますが、先述の通り旧株主や債権者の犠牲の上に圧倒的に利益が上げられる体質になり、さらに最長9年に渡って法人税を免除されるなどの優遇を受けます。手厚く保護されていながら、しがらみだけ断ち切れるものでしょうか。

 7月に自民党の国土交通部会航空問題プロジェクトチームが「儲けているんだから飛ばせよ」とばかりに、地方路線拡充を求める決議を出したのは記憶に新しいところです。

JAL(9201)が債務を帳消しにしてもらい、法人税を免除され、浮いたお金で新しい飛行機を導入したり運賃を安くすると、ライバルのANA(9202)はたまったものではありません。ANA(9202)には1兆円の有利子負債があり、法人税の支払い義務も負っています。

ANA(9202)はいろいろなところで「政府の日本航空への過剰な支援が公正な競争を歪めている」と抗議しています。が、だからと言って株主総会直後に2000億円もの公募増資(約40%の希薄化)を発表するようなことが許されるでしょうか。とても同情する気にはなれません。

 新興のスカイマークにしたって昨年5月、エアバスA330を購入のため直前まで「必要ありません」と明言していた公募増資をやりました。このときは28%の希薄化でした。

 国が規制や認可で必要以上に手を突っ込んでいる業界では、いろんなところで歪や軋みが生じてしまって、つまるところそうしたツケは株主に回ってくるみたいです。

 飛行機は大好きな乗り物なのですが、空運株にはあまり触りたくありません。株主でなくても飛行機には乗せてもらえますからね。

株主にならなくとも、JALには乗れる。

鶴のマークは、”JALグループ全社員が創業当時の精神に立ち返り、これまで培った「おもてなしの心」を守りつつ、未知の領域に足を踏み出して果敢に挑戦していく決意を表している”とのこと (撮影:ワタナベくん)

 

執筆・株トレーダー ワタナベくん

ボリンジャーバンドの新しい活用法である、セクシーボリンジャー投資法を編み出した、株トレーダー・ワタナベくん。個別銘柄をこよなく愛し、株式市場と格闘する日々から見えてきた、相場の息遣い、上がる銘柄・下がる銘柄、日本株の今後について、徒然なるままにつづる。著書に『チャートで稼ぐ「株」入門 ~必勝SEXYボリンジャー投資法のすべて~』(ダイヤモンド社)がある。

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