宇都宮大学の対応が招く事態とは

 問題は年が明けてから対応を変えた大学です。宇都宮大学は1月21日に、前期(2月25日)も後期(3月12日)も2次試験を実施しないと発表しました。このことにより、3つの課題が生じました。

 まず、地元の受験生が入りづらくなります。共通テストの成績で合否が決まるのならばと、他県からの出願者が押し寄せてきます。実際には、個別学力検査の代わりに、各学部学科が求める教科の点数を2倍にするなど換算して、例年通りの共通テストと2次試験の配点比率を維持することになりますが、横国大と同じ課題は残ります。入学後のフォローが重要となります。

 次に、共通テストでつまづいた受験生が地元の私立大学に流れる可能性です。受け皿となる早稲田大学元総長の奥島孝康さんが学長を務めている白鷗大学は大喜びでしょう。既に教育学部は教員採用で実績を上げています。地元の国立大と私立大のヒエラルキーを崩すきっかけになるかもしれないです。

 さらに、宇都宮大は隣県にある群馬大学と共同教育学部を運営していることもあり、さすがに他の4学部と同じというわけにはいきません。面接の代わりに論作文を提出させ、実技の必要な分野ではその様子を収録した映像の提出に変更するようです。それでも、群馬大の受験生と異なる選抜方法にはなるわけで、どのように評価するのでしょうか。

 課題の提出に際しては、他人の力を借りないことを求めており、そうしたことが判明した場合には合格を取り消すと要項に記載されていることも注目されます。一部では添削、助言もダメだとしています。アメリカでは、提出書類が自力で作成されたものであることを宣誓させますが、日本にはこうした文化はありません。

 添削や助言の範囲をいかに定めるかも課題となります。本人の意思にかかわらずお節介な高校教員が添削や助言をすることがあったりしたら、受験生は不幸です。むしろ今後は、アメリカのように公正に書類を作成したことを確認し合うことで、受験生と大学の双方が信頼関係を構築できるような文化が根付くことを期待しています。