北関東の「公立進学校」はなにを目指しているのか?男女別学、中高一貫化…北関東県立女子高校の雄「群馬県立前橋女子高等学校」

短期集中連載「2030年の公立進学校」。東京、北海道に続き、3回目となる今回は、北関東3県について見ていこう。茨城・栃木・群馬の人口を合わせると、埼玉と千葉の間くらいの規模となる。公立進学校のあり方は「三県三様」で大きく分かれた。それぞれ何を目指しているのか、探っていこう。(ダイヤモンド社教育情報)

「三県三様」の北関東3県

 北関東3県の茨城・栃木・群馬は、ともすれば同じようなイメージで捉えられがちではあるが、県立の進学校を巡る状況はまさに「三県三様」で、だいぶ異なることをまず指摘しておきたい。

 戦後長らく公立の男女別学校が北関東3県と埼玉には残った。21世紀に入って、東北各県では共学化が一挙に進み、どの学校も看板は共学に書き換えられている。ところが、栃木と群馬では、依然として男女別学の公立進学校がトップクラスに君臨している。その点、茨城は共学化を進めたのみならず、各地域にある公立進学校の中高一貫校化も短期間で完了してしまった。

 こうした点について、図1図2を参照しながら、県ごとに後ほど詳しく見ていきたい。なお、図中に掲げた学校については、その順位も付した。

 北関東3県の人口は約680万人(2022年)で、約740万人の埼玉県より少なく約630万人の千葉県よりも多い。政令指定都市はなく、栃木県こそ宇都宮市(約52万人)に県民の4分の1が集中しているものの、群馬県は前橋市(約33万人)と高崎市(約37万人)が双璧で、合わせると県民の3分の1が暮らし、茨城県は県庁所在地の水戸市(約27万人)とつくば市(約25万人)が、いずれも県民の1割に満たず拡散傾向にある。こうした人口分布は、公立進学校のあり方にも反映している点を、まず留意しておきたい。

 学部の入学定員を合計すると、7600人強となる北関東3県所在の国公立大の立地にもこうした事情が反映している。

 茨城県では、水戸市に茨城大、つくば市に筑波大があり、入学定員を合わせると4000人を超える。栃木県では宇都宮市に宇都宮大、群馬県では前橋市に群馬大がある。この両国立大は入学定員1000人前後と同じような規模なのだが、共同教育学部を互いに設けるなど、将来のあり方に含みを持たせている。医学部医学科は筑波大と群馬大にあり、宇都宮大にはない。栃木県には自治医科大があるものの、国立の医学部医学科がない。隣の埼玉県ともども珍しい県といえる。

 公立大の置き方も「三県三様」だ。栃木県にはなく、茨城県は県南部の阿見町に茨城県立医療大がある。対して群馬県には、前橋市に群馬県立県民健康科学大と前橋工科大、高崎市には宇都宮大とほぼ同規模の高崎経済大があり、玉村町に群馬県立女子大が置かれている。群馬県には公立大が多いこともあり、大学進学者のうち公立大に進学する者の割合は他県に比べて高い。一方で、栃木県には公立大がないこともあって、他の2県に比べて地元の私立大への進学者が多い。

 東北地方と首都圏の間という立地もあってか、旧帝国大では東京大と東北大に合格者が分散されている点も北関東3県の公立進学校の特徴だろう。茨城県は都内へのアクセスが良いため80.7%が県外に流出、大学進学者の81.5%を私立大が占めている。

「出身高校の所在地県別 入学者数」(文部科学省『学校基本調査』2022年)で、北関東3県の県内に学部がある大学への進学率を見てみると、茨城19.3%、栃木24.2%、群馬33.5%と大きく差があり、ここでも三県三様であることがうかがえる。