中国の旧正月は1週間の連休となりますので、先週7日に上海から日本に参りました。上海から日本に電話すると、日本では毒入り冷凍餃子の話で大騒ぎとのことでしたが、上海では、中国のマスコミはあまり触れないし、衛星放送もNHKのBSニュースくらいしか見ないので、なんとなく実感がわきませんでした。そこで、早速日本のテレビを見ましたが、確かにどこの局も取り上げていましたけど、だれかが毒を人為的に注入した可能性が高いという点に争点が移っているようで、思っていたよりは冷静な報道だったような気がしました。

日本のメディアは
劇場型報道の典型

 一方、日本の週刊誌を数冊買って読んでみましたら、問題の本質を冷静に追求する意見もあるなかで、相変わらず、面白おかしく中国食品の恐怖を煽る劇場型報道も見られました。日本における餃子報道の1つの類型がよく見えてきましたので、中国在住の日本人である私から見た印象を述べてみたいと思います。この問題、私の連載の主旨とはちょっと外れるかもしれませんが、日中の経済政治問題としてほってはおけないと思いましたので、少しばかりお付き合いください。(それよりも、現状、日本の被害者の方々の容体が一応良い方向に向かっていることはなりよりです。くれぐれもお大事に。早期回復をお祈りいたしております)

 まず、日本のメディアの中国に関する報道の特徴を挙げてみます。

1. 中国政府が中国側の非を認めない、日本サイドの責任にするというシナリオを膨らませることにより、中国対日本という対立構造を煽る。

2. 中国のネット上の書き込みのうち「日本製品ボイコット!」、「南京虐殺の報復だ!」「日中戦争の再発だ!」といったラディカルな書き込みを取り上げて、対立気分を盛り上げる。

3. 中国で報道された中国国内で発生した食品安全の問題を例にあげて、それらが日本向け輸出製品と同じという文脈で、中国食品は危険という認識を強調する。

4. 餃子以外の食品についてもリスクを分析する。

5. 日本政府の悠長な対応を批判する。

中国政府の慎重な対応は
緊張感の表れか

 一方、中国政府の対応ですが、私は直接中国の政府関係者と本件については意見交換しておりませんのでなんとも言えませんが、公式見解を見ている限り、とても慎重な対応をしている印象です。当然、中国側の本音としては、日本側で毒が混入したという証拠がでれば、いいに決まっておりますが、欧米からも「チャイナフリー」のような動きがあるなかで、また、オリンピックを控え、国際的にも批判を受けない対応をしておかなければならないという緊張感が伝わってきます。おそらく、対日云々を飛び越した対世界という認識で本件に対応していると思います。

 中国側の捜査情報を中国が握っている限り、中国に不利な情報は外に出さないという可能性は十分考えられますが、表面的には、冷静な大人の対応に終始すると思います。もし、中国側が中国にとって不利な情報を出したとしたら、それはまず胡錦涛氏の判断だと思いますが、そうなればこれまでの中国の常識からいえば相当拍手ものです。情報公開に向けて将来の超大国としての気概を示したものとなると思いますが、結果はどうなるでしょうか。