中国政府の日本の民主党政権に対する好意的な反応が、日本でも報じられている。民主党は選挙に先立ち、アジア諸国との関係を強化し、そして靖国に参拝せず、「村山発言」の精神を貫くと明言している。従って中国政府にとっては、日本との関係強化をするに当たっての大きな障害が取り除かれた格好だ。日本人ビジネスマンとしても、目先の利益に立てば、反日運動の高まりによる日本製品ボイコットなどのリスクは低くなるので、一応歓迎するべきであろう。

 中国政府が好意的な背景は、第一に、そもそも抗日戦争に勝ち、真の独立国家として中国を建国したことが中国共産党の正当性の源とすれば、「村山発言」はその抗日戦争の正当性を裏付けるものとして、中国にとって本質的に歓迎できるものの筈である。

 一方、中国政府にとっての「靖国カード」は、日本との外交的な駆け引きに都合よく使うことが出来たのではないかとの見方がある反面、反日問題に関し時に過激に走りうる民衆(反日教育の成果でもあると指摘されてもいるが)の動向を気にする余り、自らの政策の選択肢の幅を狭めてきたことも事実である。

 ここまで深まっている日本と中国の経済関係、又、現在環境問題や産業の高度化を目指す中国の現政権にとって、日本と新たな、発展的な関係を構築したいという意向が存在するのも確かである。この点からいっても、民主党政権の誕生により、歴史問題でギクシャクすることなく、今後の政策運営の選択肢が増えるのは歓迎すべきことのはずだ。

民主党政権の「脱美入亜」は易からず

 最近中国のメディアを見ていて面白かったのは、米国との関係から見て、民主党政権を「脱亜入欧」ならぬ、「脱美入亜」として好意的に表現されていたことがある。確かに、民主党政権がこれを目指し、1つの方向性を示してはいる。しかし、そこまでの準備は全く出来ていないと思われるので、私は、毎月中国語で連載している中国の経済誌のコラムに『日本民主党政権の「脱美入亜」は易からず!』という文章を発表して、過度な期待は禁物と中国の読者に釘を刺しておいた。

 こうした観点に関連し、中国のメディアで発表された、かつて駐大阪総領事を務めた2人の外交官との対談記事が興味深いので紹介したい。若年層が多いネットメディア読者を対象としているので、分かりやすい言葉で、且つ結構本音を語っていると思われる。民主党の新人議員の方々にとっても中国政府の立場を理解する上で訳に立つと思うので、一読をお勧めしたい。