今月初め、友人の紹介で招待を受け、日本の企業向けソフトウェアパッケージ開発、販売会社であるウィングアークテクノロジーズ株式会社以下「ウイングアーク社」という)100%出資の上海現地法人の開業パーティーに出席しました。
ウイングアーク社は、大手SI企業/上場企業の情報システム部門が取り組むシステム開発の効率化をはかるため、業務アプリケーション開発に不可欠な帳票システム・集計レポーティング分野に特化したツール・ミドルウエア製品の開発と販売、導入支援、コンサルティング等さまざまな保守サービスを提供している会社です。ただ、今回中国で販売を開始するパッケージソフトウエアは、主力の帳票システムではなく、企業システムの蓄積されたデータを可視化し、経営から業務の現場までのデータ活用環境を提供する自社開発のBI(ビジネスインテリジェンス)ツールです。
詳細な事例などは、ウイングアーク社のホームページにあるのでそちらをご参照いただきたいのですが、要するに同社が提供しようとしているシステムは、企業が経営戦略、営業戦略を練るとき、または、日本全国または世界にまたがる販売ネットワークを管理するときなどに、自社のERPシステムなどに蓄積したデータを利用者の意図に応じて高速集計し、簡単に表やグラフなどにまとめることができるツールであるといえます。
実はこのツールがなくとも、担当者が膨大なデータをエクセルなどに取り込み、“人海戦術”で時間を掛けて処理すれば、同じような資料は作成できるものです。しかし、人海戦術ということは、まず時間とコストが掛かるということ、そして販売網、販売品目が増えれば増えるほど、人間がマニュアルで処理できるデータには限界があるということから、結果として、経営者が必要とする分析データを提供できない可能性が高いのです。
そういう意味でも、企業経営にはなくてはならないデータをすばやく作成できるこのツールは、効率経営という観点からも、その役割の重要性がますます認識されつつあります。
開業パーティーの席でも、ユーザー代表として伊藤忠商事の繊維IT推進室の責任者が、活用事例の紹介をしていました。伊藤忠商事が全世界で販売する、ある有名アパレルブランドにおいては、このシステムを活用したことで、27000品目にものぼるアイテムをいかに管理し、世界各地の販売拠点の売上状況、顧客のニーズの取り込みから、仕入れ、生産、流通までの効率化にどう結び付けているかを、具体的に説明されていました。なるほど、ここまでの規模になるとマニュアルでの管理は到底無理であることから、こうしたシステムによるデータ分析を活用することの「付加価値」を垣間見ることができました。
産業構造が高度化!?
「付加価値」を求め始めた中国企業たち
それでは、なぜ、ウイングアーク社は、この時期に中国においてこうしたパッケージソフトの販売に乗り出すのでしょうか。それはまさに筆者がこれまで当連載でも触れてきた通り、「中国の産業構造の高度化ニーズの高まり」に注目したからにほかなりません。