資産とマイルは、どちらもコツコツためていくもの
――総合金融グループのSBIグループ、それに大手航空会社のJALグループと連携している点で、マネースクエアはFX(外国為替証拠金取引)業界の中でも独自のポジションにあります。そもそも、両グループとパートナーシップを結ぶに至った経緯は、どのようなものだったのでしょうか。
伊奈 マネースクエアは2025年に、SBIグループの連結子会社になりました。SBIグループ内には元々FX会社がありますが、当社の自動売買の仕組みである「トラリピ(トラップリピートイフダン)」は特許を取得しており、トラリピを核に展開している点で他社とは一線を画しています。そこに注目していただいたことが連携のきっかけです。
一方のJALグループは「マイルとともに、毎日の暮らしと人生をもっと豊かに」をコンセプトとする「JALマイルライフ」を掲げていて、マイルがたまるプリペイド決済の「JAL Pay」や、JALマイレージバンク会員を対象とした銀行サービスである「JAL NEOBANK」のような金融事業も展開しています。それらの取り組みの延長として、資産運用の分野でもマイルを積算する仕組みが検討され、当社との連携が具体化したという経緯があります。
――FX会社と航空会社の組み合わせには、かなり意外性がありますね。
伊奈 そうかもしれません。ただ、私たちは02年の創業以来ずっと、FXを短期的なマネーゲームとして捉えるのではなく、中長期での資産形成に役立てることを提案してきました。一獲千金のような感覚で大きなチャンスを取りにいくのではなく、小さな利益の積み重ねを継続して資産を築いていく。このスタイルはコツコツと積み上げていくマイルのシステムともよく似ているので、一見すると意外な組み合わせのようですが、実は親和性があります。

運用は原則“お任せ”、相場に張り付かなくてOK
――マイルをためるように「コツコツ積み上げる」運用の核となるのが「トラリピ」ということですが、まずは、従来のFXのイメージとは異なるこの仕組みについて教えてください。
伊奈 トラリピはFXや株価指数(CFD)の値動きに対して、あらかじめ設定した価格帯――、私たちは“面”と呼んでいますが、この面の中で自動的に売買を繰り返し、利益を積み重ねる仕組みです。
一般にFXというと、取引する通貨を安い価格で買い、高い価格で売るというイメージがあると思いますが、トラリピはそういった“価格”を予想するのではなく、相場を面で捉えます。
例えば、ドル円で「1ドル=155~165円の範囲で動きそう」とみるのであれば、この値幅(面)の中で売買注文を出します。トラリピは「トラップリピートイフダン」の略なのですが、買うのと売るのをセットにした注文、いわゆる「イフダン」を、面の中に「トラップ」を仕掛けるように並べます。
普通だと「160円で買って、161円で売る」という注文をした場合、一回約定(取引成立)したらそれで終わりになりますが、トラリピでは設定した面の中で動いている間中、ずっと新規の注文と決済が「リピート」されるので、効率的に利益を積み上げることができます。
――これなら、ずっとモニターに張り付いてチャートを見張っている必要もないですね。
伊奈 まったくないです。もちろん、定期的に資産状況を確認したり、状況に応じて戦略を変えたりする必要はありますが、適切に設定していれば見張っていなくて思わぬ損失を被るということも避けられます。そのため、忙しいビジネスパーソンでも、無理なく続けることができます。
激しく動くチャートを見ていると、どうしても不安になったり、ばくちのようにノリで注文してしまったりと、感情に流された売買をしがちです。その点トラリピは、相場と距離を置き、あらかじめ定めたルールをシステムに実行させることで、感情や相場予測に依存しない「再現性」の高い運用ができるのが大きな特徴です。
――それでも、FX初心者だと不安を感じる人も多そうです。
伊奈 確かに、最初は難しく感じるかもしれません。ただ、昨今自動売買ツールを提供するFX会社は増えていますが、トラリピは07年に誕生し、そこから20年弱にわたってUI/UX*の向上に努めてきました。ですから「どうやって始めるか」「どんな通貨ペアを選べばいいか」「イフダンの設定はどうやるか」などを分かりやすく解説するコンテンツや、さまざまな情報発信、サポート体制が充実しています。
一方で、秒単位で訪れる売買チャンスを逃さないために、システムの技術革新にも注力してきました。こうした長年の実績とシステムの安定性については、業界の中でも優位性があると自負しています。
* UI/UX=UI(ユーザーインターフェース) 、UX(ユーザーエクスペリエンス)。アプリやWebサイトにおける「見た目」や「操作感」のこと。
トラリピでJALのマイルがたまる仕組みとは?
――では、JALグループとの連携により、26年2月から開始した「JALのマイルがたまるトラリピプログラム」の具体的な内容について教えてください。
伊奈 文字通り、トラリピで資産運用を行うと、条件に応じてJALのマイルがたまる仕組みです。以前は「マネースクエア ポイント」がたまるプログラムを提供していましたが、このポイントに代わってマイルがたまるようになりました。
――自社のポイントプログラムからマイルがたまるプログラムに移行するというのは、ハードルが高かったのではないですか。
伊奈 そうですね、元々のプログラムもポイントを商品やギフトカードに換えられたり、口座に資金還元(キャッシュバック)できたりもして人気がありました。以前のポイントと比べて価値を下げるものにならないよう、マイルの積算設計にはかなりの時間と手間をかけています。マイルは日常で使えるサービスや非日常の体験に加え、航空券にも交換できるため、さらに魅力的になったと思います。以前からのお客さまにも十分納得していただけるプログラムになっていると思います。
――具体的に、どのようにマイルがたまっていくのでしょうか。
伊奈 トラリピでたまるマイルは「毎日マイル」と「取引マイル」の2種類です。毎日マイルは、対象となる通貨ペアでトラリピを一つでも運用していれば、売買が成立しなくても毎日マイルがたまります。一方の取引マイルは、トラリピの取引量または取引高に応じて積算されます。
毎日マイルも取引マイルも「マネースクエアステータス」が上位になるほど、基準となるマイル数が増えてどんどんたまりやすくなります。
マネースクエアステータスは預託証拠金の金額に応じて3段階に分かれていて、100万円未満が「シングルスター」、100万円以上が「ダブルスター」、1000万円以上が「トリプルスター」となります。
マネースクエアステータスは、マネースクエア ポイントの時代からありますが、JALのマイルのプログラムへの移行と同時に、ダブルスターの適用条件を変更しました。以前は預託証拠金200万円以上で、適用には一定の条件を満たす必要があったのですが、新しいプログラムは100万円以上の預託証拠金を入れれば、ダブルスターになります。
ダブルスターになると、シングルスターより圧倒的にマイルがたまりやすくなるので、先ほどもお話ししたように、100万円程度の資金から始められることをお勧めしています。ちなみに、クレジットカードの「JALカード」を持っていると、それだけで取引マイルが2倍になるので、かなりおトクです。
――100万円でトラリピを始めるとすると、実際にどれくらいのマイルがたまるのでしょうか。
伊奈 これまでのバックテストの実績でいうと、100万円の運用で、なおかつ「JALカード」を所持して取引マイルが2倍になると想定した場合、年間約5800マイルたまるというデータが出ています。トラリピの運用規模を300万円まで増やすと、1万3000マイルほどまで増えるので、トラリピのマイルだけでその分の航空券を獲得できます。1万3000マイルあれば、国際線の片道(東アジア地域への片道)の航空券と交換できます。
――これを機に、トラリピを始めた“JALマイラー”の方も増えていそうです。どのような反響がありましたか?
伊奈 従来は、日常の決済や航空券購入などの消費によってマイルをためるのが基本でしたが、トラリピは資産を増やしながらマイルもためられる点が新しいという評価を頂いています。また、昨今は、燃油サーチャージ高騰や、為替の問題もあって旅行のハードルも高くなりがちですが、このような形でマイルをためられるのはうれしいといった声も頂いており、手応えを感じています。
――ちなみに、初心者はどれくらいの資金で、どの通貨ペアから始めるのがいいでしょうか。
伊奈 リスク管理のためにも2~3種類の通貨ペアに分散するのがベターで、最初は100万円程度から始めることをお勧めしています。分散が望ましいのは、損失が出たときの振れ幅を縮小することにつながるからです。
一時的に価格が下がって損失を含んだポジションを持っている状態、いわゆる含み損になることは最初の段階ではよくあります。これでびっくりして、すぐに売ることを繰り返していると利益を出せないので、最低でも3カ月など、長いスパンで構えて運用するのが鉄則です。
トラリピは値動きの範囲を指定して注文する仕組みなので、狭い値幅での値動きが多い通貨ペアが「トラリピ向き」といえます。この条件を満たしやすいのは、オーストラリアとニュージーランドのように、同じ経済圏に属し、関係が深い国同士の通貨ペア。26年8月時点で当社がトラリピ向きの通貨ペアとして指定しているのは「豪ドル/NZドル」「ユーロ/英ポンド」「米ドル/カナダドル」「ノルウェークローネ/スウェーデンクローナ」といったところです。加えて、同じ経済圏ではありませんが、ショック相場に強いという点から「米ドル/シンガポールドル」も指定しています。
資産運用をより分かりやすく、身近なものに変えていく
――「JALのマイルがたまるトラリピプログラム」の注目の施策があれば教えてください。
伊奈 JALグループでは、フライトやJALカードの利用、JAL PayやJAL NEOBANKなどの提携サービスの利用に応じて「Life Status ポイント」を積算しています。
Life Status ポイントをためると、6段階あるStarグレードが上がっていき、ラウンジ利用や無料空港宅配サービス、ホテルでの優待特典といった上質なサービスを受けられるようになります。そして、26年8月より、トラリピの利用でもマイルに加えてLife Status ポイントも積算されるようになりました。年間でたまったマイルに応じて年1回付与する方式になり、仮に先ほど例に挙げたように100万円の運用で年間5800マイルをためたとしたら、14ポイントたまります。
*キャンペーンでためたマイルはLife Status ポイント積算の対象外
今後は、トラリピ向けの新規通貨ペア追加も含め、運用の選択肢を広げる施策を検討しています。同時に、これまで投資経験のなかった層に向けて、リスクや仕組みを正しく理解してもらうための情報発信にも一層力を入れていきます。
FXは「難しそう」といったイメージを持たれることがあり、ハードルが高いと思われがちです。大きな会員基盤を持つJALグループとの連携は、これまでタッチポイントがなかった顧客層にリーチすることができ、また、マイルという入り口から入っていただくことで投資に対する心理的障壁を和らげ、幅広い層に新たな資産形成の選択肢を知ってもらう大きなチャンスになると考えています。
インフレの影響などから投資への機運が高まっていますが、ポートフォリオの一部にトラリピをプラスし、マイルがたまる新しい資産運用をより多くの方に体験していただきたいですね。

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