人材データはあるのに、なぜ経営に十分に活用し切れないのか

人材データを一元管理する仕組みは、多くの日本企業にとって当たり前の経営インフラになりつつある。多くの企業がタレントマネジメントシステムを導入し、従業員のスキルや評価といったデータを可視化してきた。

にもかかわらず、こんな問いを自問したとき、即座に「Yes」と答えられる経営者は、まだ少ないのではないだろうか。

「そのデータは、採用・育成・配置・評価といった人材マネジメントの意思決定に、本当に活かされているか?」

タレントマネジメントシステム市場をけん引し、国内4500社以上の導入実績を持つカオナビの代表取締役社長CEOの佐藤寛之氏は、この問いに対して自社が置かれた立場も含めて率直に答える。

「評価のシステム化やエンゲージメントサーベイ(従業員の会社や仕事に対する愛着や熱意を測るためのアンケート調査)に取り組む企業は増えています。しかし、それが実際の後継者育成や適材適所の配置、従業員一人一人が自律的にキャリアを考えられる状態につながっているかというと、活用し切れていない企業の方が多い。うまく活用できている企業においても、人事、経営者、現場マネジメントの個人の能力に依存してしまっているというのが実態です。そうした点は、長年タレントマネジメントの導入を進めてきた立場としてじくじたる思いもあります」

データの「蓄積」と、データの「活用」。この二つの間に横たわる深い溝こそが、今、日本企業の人材マネジメントが直面している本質的な課題だ。そしてその溝を埋める解として世界的な注目を集めているのが、「タレントインテリジェンス」という概念なのである。

なぜタレントマネジメントシステムを使いこなせないのか

タレントインテリジェンスを正しく理解するには、まずその前段として「タレントマネジメントシステムがなぜ使いこなされていないのか」を整理する必要がある。

「カオナビのユーザー会などでユーザーの皆さまとお話しすると、『自社での活用はまだまだです』という声が大半を占めているのが現状です」

なぜデータが蓄積されても活用されないのか。佐藤氏はその構造的な理由を二つの視点で分析する。

1.膨大なデータを使いこなせる専門家・人材がいない
タレントマネジメントシステムによって蓄積された膨大な人材データを、どう分析し活用すれば組織力の向上や事業の成長につながるのか。誰もがその答えを出せるわけではない。データを使いこなせる専門家・人材は限られている。

2.データの活用範囲が「人事と一部の経営層」に限定されてしまっている
タレントマネジメントとは本来、経歴・スキル・評価などのデータをオープン化し、現場で活用されることで強い組織をつくっていくためのもの。しかし現実問題として、蓄積されたデータを実際に使っているのは、人事部門と一部の経営層に限られている。本来、それを最も必要としているはずの現場のマネジメント層や従業員に対して使い方の支援が必要なのに、それができていない。

従来は、このデータの「蓄積」と「活用」のギャップを埋めるには「専門家の職人芸」が必要だった。膨大なデータを読み解き、組み合わせ、個人・チーム・組織の最適解を導き出すことは、高度な専門知識と経験を持つ人事コンサルタントにしかできないことだったのだ。しかし今、AIの登場でその状況は変わりつつある。

この限界を突破し、的確な人材マネジメントを実現するための新たな鍵となるのがAIを活用した「タレントインテリジェンス」である。タレントインテリジェンスは、単にデータを管理する時代から、データをインテリジェンス(知能・知見)に変換し、経営の未来を切り拓く時代への強力なパラダイムシフトを意味する。

タレントインテリジェンスとは何か——タレントマネジメントとの決定的な違い

改めて、タレントインテリジェンスとは何か、タレントマネジメントとは何が違うのかを整理しよう。

佐藤氏はその違いをこう定義する。

「インテリジェンスという名称が示す通り、データとAIを活用して未来軸をサジェストすることがタレントインテリジェンスの本質です。タレントマネジメントが過去データの蓄積に重きを置くのに対し、タレントインテリジェンスは未来に向けたサジェストによって意思決定を支援します。自社のデータだけでなく外部の統計データも活用しながら、高度な意思決定の未来予測を行うものです」

つまりタレントインテリジェンスは、タレントマネジメントに「代わる」ものではない。これまで積み上げてきた人材データという土台の上に立ち、AIの力を借りてそれを初めて「経営に使える知恵」へと変換するものなのだ。

カオナビが定義する「タレントインテリジェンス」——「意思決定の民主化」というビジョン

カオナビが独自に定義するタレントインテリジェンスには、一般的な概念にとどまらない固有の思想がある。それが「意思決定の民主化」だ。

「タレントマネジメントが経歴・スキル・評価などの人材データのオープン化を指すとすれば、われわれが目指すタレントインテリジェンスは、その先にあるキャリアや働き方に関する意思決定のオープン化、すなわち民主化を指します。データとAIがあれば、従業員一人一人がより可能性を広げた意思決定ができる。あるいはミドルマネジメントが自分のチームメンバーを戦力化するための多角的な視座を得られる。そうした意思決定の支援をオープンに展開できると考えています」

従来、タレントマネジメントの恩恵を受けていたのは、データを閲覧・分析できる人事や経営層の一部に限られていた。しかしカオナビが描くタレントインテリジェンスの世界では、現場のマネジメント層も、そして従業員一人一人も、AIを介してデータの恩恵を受けることができる。

例えば、ある社員が自分のキャリアに悩んでいるとする。従来であれば選択肢は、上司や人事に相談するか、転職サイトで外部の機会を探すかのどちらかだった。しかしタレントインテリジェンスが機能する環境では、AIエージェントが社内の数千人・数万人のキャリアデータを参照しながら「あなたの経歴とスキルセットなら、この部署で活躍できる可能性がある」「同じ悩みを持っていたキャリアの先輩がいる」といった具体的な示唆を返すことができる。

「大手企業であれば社内に多くの可能性や魅力的な仕事があるはずですが、それがクローズドになってしまっているケースが少なくありません。企業と個人の関係性の可能性を広げることこそ、AIエージェントの真の効能だと捉えており、積極的な活用が重要だと考えています」

また、現場のマネジメント層にとっても変革の効果は大きい。1on1や面談の前にAIがチームメンバーのデータを分析し、「このメンバーにはこういうキャリアの可能性がある」「このチーム編成が最もパフォーマンスを発揮しやすい」といった示唆を事前に提供する。日本で最も多忙ともいわれるミドルマネジメント層の意思決定の質を高め、負荷を軽減できる。

経営者にとっては、後継者育成計画(サクセッションプラン)や人材配置の検討を、今まで以上に「解像度高く」行えるようになる。

「経営者にとっても、蓄積されたデータを自ら活用して意思決定ができます。いちいち各本部長に『優秀な人材はいないか』と聞かずとも、HRデータを活用した意思決定をハンズオンで行える環境が実現します」

つまり、カオナビが提供するタレントインテリジェンスとは、4500社以上の人材データを基盤にAIを活用し、経営層から現場の従業員まで、未来志向の意思決定を支援する新しい仕組みなのである。

ここまで読んで、こう感じた経営者も多いだろう。「タレントマネジメントに投資してきたが、また新しい概念に乗り換えなければならないのか」——。

佐藤氏はこの懸念をきっぱりと払拭する。

タレントマネジメントシステムはタレントインテリジェンスの土台、すなわちデータプールです。意味のあるデータが蓄積されていなければ、タレントインテリジェンスは機能しません。蓄積してきたデータは活用の支援に直結しますから、これまで真剣に取り組んできた企業ほど、AIエージェントは高い効果を発揮します。今まさに、過去の投資を回収するフェーズに入ったと捉えていただくのが正確です」

タレントマネジメントに注力してきた企業ほど、タレントインテリジェンスを導入した際の恩恵は大きくなるのである。

なぜタレントインテリジェンスで「カオナビ」を選ぶべきなのか

タレントインテリジェンスへの関心が高まるにつれ、HRテック市場での競争は激化している。その中でカオナビが持つ競争優位性は何か。

強み①:4500社以上の「定性ギガデータ」という唯一無二の資産
「カオナビの最大の強みは、4500社を超える顧客企業から蓄積された人材開発のノウハウがもたらす『ネットワークエフェクト』と、個社性が強く正規化されていない圧倒的な『定性データ』の蓄積にあります。これらが掛け合わされることで、他社には模倣できない、極めて高精度かつ実践的なAIのサジェストを提供することが可能となるのです。AIを活用する上では、きれいに整えられたデータよりも、現場の生々しい定性的な情報こそが真の価値を生むのです」

タレントマネジメント領域をリードしてきたカオナビだからこそ、タレントインテリジェンス領域においても日本をリードすることができるのである。

強み②:セキュリティーと権限設定が担保されたプラットフォーム
「秘匿性が守られた環境の中で、適切にAIエージェントを活用できること——これがカオナビに求められていることだと認識しています。だからこそ、汎用AIを直接契約するのではなく、カオナビ上でAIを使っていただく意義があります。権限設定やセキュリティーが制御されたデータベースの中でAIエージェントを活用できる点は、人事データという最高機密を扱う企業にとって決定的な安心材料になります」

強み③:「Talent Intelligence™ 共創プロジェクト」によるエコシステムの構築
2026年7月1日に始動した「Talent Intelligence™ 共創プロジェクト」では、業務提携・資本提携・M&Aまで視野に入れた外部連携が進む。その背景には、タレントインテリジェンスの価値を最大化するための明確な思想がある。

「タレントインテリジェンスが最も機能するのは、データの多彩さと豊富さが確保された状態です。HRデータだけでなく、SlackやTeamsといったコミュニケーションデータも貴重な資産です。多角的なデータを蓄積し、個人・組織の解像度を高めることでAIエージェントは一層強力になります。そのためには外部とのアライアンスを積極的に進めていくことが不可欠です」

カオナビが切り拓く「タレントインテリジェンス」の可能性——AI時代に日本企業が競争優位を確立するための武器カオナビ
代表取締役社長CEO
佐藤 寛之

AI時代を勝ち抜く企業の条件——「タレントインテリジェンス」が変えるもの

AI時代において、企業が競争優位性を保つための源泉は間違いなく「人材」だ。人材のポテンシャルを最大限に引き出すためには、従来のタレントマネジメントをタレントインテリジェンスへとアップデートさせることが急務である。

これからタレントインテリジェンスに取り組み始める企業に対し、佐藤氏はこうアドバイスする。

「経営や人事主導でトップダウンに仕組みを整えてから現場展開——というアプローチは、実はタレントインテリジェンスにおいてうまく機能しない可能性があります。現場の一人一人が『使うと自分にとってメリットがある』と実感するところから始めることで、初めて良質なデータが蓄積され、そのデータが経営の意思決定を高度化するというループが回り始めるのです」

カオナビではこのループを「インフィニットモデル」と呼んでいる。活用があるから意味あるデータが集まり、意味あるデータが集まるからより良い活用ができる——この正の循環を起動することが、タレントインテリジェンスの導入成功の核心だ。

生成AIの普及により、ホワイトカラー業務の産業構造は大きく変わろうとしている。どのような人材を採用し、どう育成し、どう再配置するかという判断には、かつてないほどの複雑さとスピードが求められている。

佐藤氏はこの問いに、こう答えている。

「カオナビのAIエージェントは、AIというテクノロジーを通じて、働き方や企業と個人の関係性を大きく変革する武器になると確信しています。これを単なるITの話と捉えるのではなく、AIエージェントを活用することは自社の働き方そのものを変革することだという視点でタレントインテリジェンスをご活用いただければ、企業業績に大きなインパクトをもたらすことができます。ようやくその時代が到来したと感じています」

カオナビでは26年10月をめどに、タレントインテリジェンスを実現するソリューションをリリースする予定だ。

タレントインテリジェンスは、単なる人事部門のDX(デジタルトランスフォーメーション)ツールではない。それは、企業と個人の関係性そのものを再定義し、働く人一人一人の「意思決定の自由」を広げることで、組織全体の競争力を底上げする経営戦略であり、経営インフラそのものなのである。

データはある。次は、そのデータを「知恵」に変える番だ。

●問い合わせ先
株式会社カオナビ
〒107-0052 東京都港区赤坂1-8-1 赤坂インターシティAIR 33F
TEL:03-6633-2781(代表)
https://www.kaonavi.jp/
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