たとえば、(A)の狩猟採取活動を目的とした人は、キノコ狩りや潮干狩りと同じ感覚で昆虫を採集する。本書にも、「昆虫食の醍醐味は、身の回りの自然に目を向け、そこから食べるのに適した種を自らが選び取り、発見し、追跡し、捕獲し、そして調理して食べるという一連の行為によって、四季の恵みを五感で味わうことができる点にある」とあるように採集を楽しみ、採った昆虫を周りの人々と調理したり、食したりすることで、コミュニケーションを行っているのだ。

 また、(B)のグルメとして昆虫食を楽しむグループにも、注目してみよう。「初めはどんな味なのか不安や疑いを持ちながら、恐る恐る口にしたとき、それがおいしかったなら、食べられるものの幅、料理できる品も増えることになる」とあるように、昆虫の美味しさを知ったグルメな人々は、調理方法や食べ合わせの工夫をしたがる。彼らは、ただ昆虫を食べるのではなく、より新しい食べ方を追及しようとする。

 このような昆虫を食す人々の心理は、世の中にますます昆虫食を広げるためのヒントになる。

昆虫食が食料資源不足を救う

 昆虫は、今や食料資源としての価値も持っている。

「地球規模の気候変動や人口増加による世界的な食糧危機が叫ばれるにいたったいま、FAO(国連食糧農業機関)をはじめさまざまな研究機関で、未利用資源としての昆虫が注目されるようになってきた」

 本書にもこのような記載があるとおり、FAOは2014年に「食用昆虫─食料と飼料の安全保障に向けた将来の展望─」というタイトルで報告書を発表した。その中では、今後予想される食糧問題の解決策として、「昆虫食」が挙げられている。

 そもそも、人間が健康的に生活するためには、タンパク質が欠かせない。人口増加によってタンパク質不足が懸念される中、水がほとんどいらず、小規模予算で飼育できるなど環境負担の少ない昆虫が持つ、良質なタンパク質に期待が高まっているのだ。本書では、この他にも下記のような理由があるため、昆虫が優秀な食材として紹介されている。

   1.種類が多く、量も豊富なこと
   2.繁殖力が旺盛なこと
   3.餌が人の食料と競合しないこと
   4.変温動物でエネルギー効率がいいこと

 Exo社の他にも、欧米では「昆虫食」をテーマに起業しているベンチャー企業が増え続け、今や世界中で200を超えるという。本書に「昆虫は世界各地で日常的に食べられている。違和感を感じるのは育った食文化や食事環境に影響されるからだ。慣れてしまえば抵抗がなくなる」とあるとおり、いずれは「昆虫を食べる」こと自体が普通になるかもしれない。私たちの食生活の一部となりうる「昆虫食」の動きに、2017年も注目である。