1983年東京大学大学院工学系研究科博士課程単位取得退学(工学博士)。東京大学生産技術研究所助手、農林水産省農業環境技術研究所主任研究官、ロンドン大学客員研究員を経て現職。著書に『「食糧危機」をあおってはいけない』(文芸春秋)『「作りすぎ」が日本の農業をダメにする』(日本経済新聞出版社)など著書多数。
「今、世界は食糧危機に陥っている――」
このように書いても、多くの日本人は実感がないはずだ。だが、実際に穀物価格の推移を見ると、世界はまさに食糧危機の真っ只中にあることがわかる。
トウモロコシは世界で最も多く取引される穀物だが、IMF(国際通貨基金)によると、その先月の価格は1トンあたり274ドルだ。2011年の4月には319ドルまで上昇した。もちろん、過去最高値である。2005年1月の価格は96ドルだったから、数年で約3倍に上昇したことになる。中世以来、穀物価格がこれほど短期間に、これほど急激に上昇したことはない。これを危機と言わずに、なにを危機と呼ぶのか。
両者とも2005年頃から乱高下しているが、よく似た動きをしている。干ばつでトウモロコシが不作になったときに、原油が採掘し難くなることはないから、この変動は需給に基づくものではないことが分かる。その原因は金融に求めるべきだろう。