「時間を守れない」「マルチタスクが苦手」「指示の意図を正しく理解できない」――。職場でこうした課題に直面すると、「能力不足」と片付けられがちだ。しかし、その背景には脳の発達特性が関係していることも多い。適した環境では高いパフォーマンスを発揮できる人材が、現行の職場では「適応できない」と見なされてしまうケースも少なくない。近年、企業の人材戦略として「ニューロダイバーシティ(脳の多様性)」の活用が注目されている。特にIT・DX領域では、発達特性が高度な専門性につながる可能性が指摘され、採用やマネジメントの見直しが進みつつある。本連載では、2024年秋に日本総合研究所の木村智行氏らが開始した「ニューロダイバーシティ・マネジメント」に関するPDCAの試みをベースに、企業の実践的な取り組みや課題を全5回にわたって掘り下げる。第1回は、人口の1割程度を占めるという「発達障害」の現れ方や、職場で直面する身近な問題のほか、社会では彼らの個性が必要とされる「仕事」が発掘され、注目を集めている実態について取り上げる。
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