『豊臣兄弟!』第10回より (C)NHK『豊臣兄弟!』第10回より。木下小一郎長秀/豊臣秀長(演:仲野太賀) (C)NHK

歴史はエンターテインメント!かしまし歴史チャンネルへようこそ。『豊臣兄弟!』第10回のタイトルは「信長上洛」。稲葉山城を岐阜城と改め、居城を移した織田信長(演:小栗旬)は、近江の浅井長政(演:中島歩)に妹の市(演:宮崎あおい)を嫁がせて同盟を結び、京都へのルートを確保します。そんな信長のところにやってきたのが、足利義昭(演:尾上右近)の使者、明智光秀(演:要潤)でした。光秀は「上洛して足利義昭を将軍に擁立してほしい」と信長に頼みます。このとき足利義昭は「俗世と離れて一生を終えるつもりでいた」と語っています。一度は仏門に身を捧げた義昭が再び将軍の座を目指すことになった裏には、彼の兄が巻き込まれた、あるクーデターがありました。今回は義昭と信長が上洛する“ちょっと前”に何が起きたのかを解説します。(かしまし歴史チャンネル/川合章子)

父は「流浪将軍」、放浪から始まった足利義輝の将軍人生

 今回は、室町幕府第13代将軍・足利義輝の生涯を、あらためて振り返ってみたいと思います。

 将軍が、自ら刀を振るって討ち死にする――そんな劇的な最期を遂げた将軍が、本当にいたと思いますか? 答えは「いた」なんです。しかもその人物は、のちに信長が奉じて上洛する足利義昭の実兄でもありました。

 足利義輝は天文5年(1536)、第12代将軍・足利義晴の長男として生まれました。しかし、この時代、室町幕府の権威は地に落ち、将軍は有力大名に担がれる「名目上の存在」に近い立場でした。

 父・義晴は、有力守護や管領家の争いに翻弄され、京都を追われて近江や大和を転々とする生涯を送り、「流浪将軍」とも呼ばれていたほど。義輝もまた、幼少期から、そんな父に従って放浪生活を余儀なくされました。滋賀県の坂本や朽木(くつき)などに移り住み、京に呼び戻されたかと思ったら、再び京を追われる……将軍の息子とはいえ、安定とは無縁の少年時代を送っていたのです。

織田信長(右)は、上洛に先立って、妹・お市の方(左)を浅井長政に嫁がせる (C)NHK織田信長(右)は、上洛に先立って、妹・お市(左)を浅井長政に嫁がせる (C)NHK 拡大画像表示