新型コロナウイルス感染症の拡大で、多くの企業がテレワークを導入した。その一方、請求書や契約書類などを扱う経理・総務・法務部門などは、紙の書類や印鑑処理のためだけに出社を余儀なくされるという課題が浮き彫りになった。書類や印鑑の電子化は以前から指摘されてきた問題だが、今後どのように解決していけば良いのだろうか。

 この秋から冬にかけて新型コロナウイルスとインフルエンザの感染拡大が懸念されている。多くの企業では既にテレワークの導入に取り組み、ウィズコロナ時代の新たな働き方として定着しつつある。一方、請求業務や契約業務などで必要な書類の作成や押印のためにテレワークができないという経理・総務部門の声も聞かれる。

事業継続にも効果的な
契約書類の電子化

アイ・ティ・アール
シニア・アナリスト
三浦竜樹

 ITに関する市場調査やコンサルティングを手掛けるITRは2020年4月、国内企業でIT戦略の策定や実務に関わる担当者を対象に「コロナ禍の企業IT動向に関する影響調査」を実施している。同調査では、コロナ禍で企業のIT戦略は「大いに加速すると思う」(27%)、「やや加速すると思う」(44%)と回答。7割近くがIT戦略遂行の加速要因になると考えていることが分かった。

 テレワーク制度の導入は62%が実施、22%が実施予定と答えている。そして、社外取引文書(契約書など)や社内文書(申請書など)の電子化対象拡大について、それぞれ36%、40%が「実施済み」、19%、21%が「20年度内には実施予定(実施中含む)」と回答している(図)。「企業のコロナ禍への対応や政府の法整備により、請求書や契約書類の電子化が加速すると考えられます。契約書類などの電子化は、パンデミックや自然災害などを想定した事業継続の観点からも必要です」とITRの三浦竜樹氏は話す。

 法的な有効性が求められる文書や契約書類などの電子化を加速すると期待されているのが、電子署名と電子証明書を巡る動きだ。電子証明書は電子署名が本人のものであることを証明するもの。実印の印鑑登録と同じように事前登録が必要で、発行に手間がかかるという問題があった。これが契約書類などの電子化がなかなか普及しない要因の一つになっていた。