授業を受けるだけでは成長できない

 夏期講習で高い授業料を払い、朝から晩まで塾で授業を受けることに時間と気力と体力を注ぎ込む。それなのになぜか力がつかず、2学期の模試で成績が下がり、受験で不合格になってしまう。そんな子がたくさんいます。

「人の成長の原理」がわかっていなければ、皆さんのお子さんもそうなりかねません。親子ともに頑張っているつもりなのに空回り。そんな事態を避けたければ、成長するために何をしなければならないのかをしっかりと理解しておく必要があります。そのするべきことこそが、「演習」なのです。

「授業を受けるだけ」では、人は成長できないんですね。考えてみれば当たり前です。スポーツでも音楽でも、上手な人のやり方を見て学ぶことは大事ですが、見ているだけでその通りに真似できるはずがありません。

 自分で何度も練習をして、ようやく自分の技術として習得できます。それは勉強でも同じです。先生の説明を聞いてやり方がわかっても、それをテストの場で実践できるようになるには練習が必要なのです。

夏のスケジュールを見直してみよう

 皆さんのお子さんの夏のスケジュールはどうなっていますか?朝から晩まで授業を「聞くだけ」のスケジュールになっていたりはしないでしょうか。

 もしそうなっていたら、大至急スケジュールの立て直しをしてください。こんなことを言うと、よその塾の先生から怒られるかもしれませんが、余計な特別講座などは取るのをやめて、演習する時間を確保するようにしましょう。

 家にいると勉強をサボってしまう子は、特別講座に行かせたほうがマシかもしれませんが……特に共働きのご家庭では、子どもが日中1人で家にいても、なかなか集中して勉強に取り組めていないというお悩みを抱えがちです。自習室をうまく活用するなど、環境を整えることで何とか対応したいものですね。

 1人だとサボってしまう子も、先生や友達が周りにいると「良いところを見せないと」というプラスのプレッシャーがかかって、頑張ってくれたりするものです。授業の前後に塾で自習する時間を作ったりするのも、勉強のリズムが作りやすくてよいですね。

間を空けて覚え直した内容はより定着する

 くれぐれも、授業を受ける「だけ」の夏にならないようにご注意ください。なお、夏期講習はどこの塾でも復習中心のカリキュラムになります。苦手な科目・苦手な単元ほど、すでに習ったはずなのにすっかり忘れてしまっていて愕然とするものです。

 親御さんは、あらかじめ「そんなものだ」と思っておいてください。本人も忘れたくて忘れているわけではないので、そこで責めることがないようにしましょう。そもそもこれまでに習ったことをみんなが覚えていないからこそ、夏は復習のカリキュラムになっているのです。

 人間の脳の記憶の仕組みは、短期間に覚えたことはすぐに忘れるようにできています。間を空けて忘れた頃に覚え直したことは、長期間覚えていられるようになります。「忘れているからこそ勉強するとパワーアップする」と、ポジティブに捉えてくださいね。

 私たちテスティーでは、以前これを「サイヤ人理論」として生徒たちに教えていました。死にかけた状態から復活すると、めっちゃパワーアップするというドラゴンボールのアレです。ただ最近ではドラゴンボール自体を知らない子が増えているので、あまりこの名称は使っていません。でも、忘れかけた頃の復習が効果的だという事実は変わりません。

覚えている内容が多い場合は、特に演習時間の確保を

 逆に、夏期講習で復習する内容を覚えていることが多かったら、それ自体は喜ばしいことなのですが、夏期講習の授業はあまり意味のないものになってしまうかもしれません。

 これは集団授業を受けている限り多かれ少なかれあることですが、自分はわかっているのに先生の説明を聞かなきゃいけない無駄な時間が生まれます。そして、成績が良い子ほどその不利益を受けることになります。大体の塾は4科目の成績でクラスが決まりますから、得意科目と苦手科目で差がある子も、得意科目の授業ではそういう状態になっているかもしれないですね。

 わかりきったことをボーっと聞いているくらいなら、本当はその時間を使って、宿題にされるであろう問題を解いておくくらいの時間の有効活用(演習)をしたいものです。

 個別指導では、その子に合わせて必要なことだけを教えるのでそうした無駄は生まれませんが、集団指導だとどうしても避けられないことなのです。そう考えると、「個別指導は授業料が高い」と思われがちですが、「子どもが教えてもらう内容に対しての授業料」としてはむしろ安いとも言えます。なにしろ、集団指導では「わかっていることを教えてもらう」という本来必要のない時間で、価値が薄められているのですから。

 短時間で自分に必要なことだけをギュッと濃縮して習うことで、演習する時間を十分に確保できることも個別指導のメリットだと私は思っています。クラスメイトと切磋琢磨する環境は素晴らしいもので、集団指導ならではのメリットはあるのですが、デメリットもあることを把握したうえで上手に解決していきましょう。最後は少しだけ個別指導の宣伝でした。

 この夏、演習時間をばっちり取って、お子さんの成長につなげてくださいね。