「現代の国語」「言語文化」試作問題 第B問

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国語 試作問題 第B問 出典: 大学入試センター「令和7年度試験の問題作成の方向性、試作問題等

 続いて第B問です。第A問と同じく資料を読み取り設問に答える形式です。第A問と比べ、資料のグラフや図が減り、文章中心になっています。設問の形式も第A問とは異なる傾向になっています。

 第B問は、日本語独特の言葉遣いに関するレポートを作成する場面での問題です。はじめにまとめられたレポートがあり、その後に資料として調査結果のグラフと、「役割語」について説明した文章が2つ展開されています。第A問と比べると読みやすく、全体を把握しやすい内容になっています。

【資料Ⅰ】

  • 調査のグラフ:性別による言葉遣いの違い

【資料Ⅱ】

  • 文章:役割語の定義

【資料Ⅲ】

  • 文章:役割語の習得時期

【資料Ⅰ】は性別による言葉遣いの違いについての調査結果のグラフです。「このバスに乗ればいいのよね?」これは男女どちらの話し方で、実際に使うかどうかといったアンケート結果です。【資料Ⅱ】は役割語の定義について書かれている文章、【資料Ⅲ】も役割語の習得時期について書かれている文章です。

 資料をレポートに引用する中で、グラフを適切に解釈したり、文章を要約したりする力や、主張を理解してもらうためにレポートに何を補足したらよいか、目的に応じて内容や構成を考える力を問う内容になっています。図やグラフより文章が多い分、現代文の読解テクニック(抽象・具体、因果関係、対比)が随所で問われています。

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国語 試作問題 第B問 出典: 大学入試センター「令和7年度試験の問題作成の方向性、試作問題等

 各問を詳しく見ていきます。

 問1は【レポート】の展開を踏まえて【資料Ⅰ】のデータを正しく理解する問題です。選択肢はデータから読み取れる内容になっていて、その中でレポートの展開に当てはまる選択肢を選ぶ必要があります。

 問2では【資料Ⅱ】と【資料Ⅲ】で説明されている「役割語」についての説明の要約を選ぶ問題。問1と同様、書いてあることを選ぶのではなく、空欄前後の展開的に、資料のどの部分が求められているかを考えて選択できるかが重要になります。

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国語 試作問題 第B問 出典: 大学入試センター「令和7年度試験の問題作成の方向性、試作問題等

 問3は【資料Ⅱ】と【資料Ⅲ】の「役割語」について理解し、具体例を選ぶ問題。適当でないものを1つ選びます。今までのセンター試験や共通テストでは、具体例がすでに文章に載せられていて、筆者側にとっては主張に説得力を持たせるもの、私たち読み手としては理解を深めるための材料だったので、「具体例が文中に書いてあるどこの主張をわかりやすくするためのものなのか」がわかればよかったのですが、この形式だと「役割語」という言葉の定義と文章において、伝えたい主張の本質を理解して、そこに添えるのに適切な具体例、不適切な具体例を判断しなければいけない、つまり私たちが筆者側の目線に立つことを要求している点が、今までと違って新しい内容になっています。

 問4はまとめたレポートの論拠が不十分なため、補足する内容を2つ選ぶ問題。レポートの構成を把握し、どれを追加したら主張が理解されるかを選びます。この問題は第B問で配点が5点ずつと最も高い問題でした。

問題番号

(配点)

 設問  解答番号  正解   配点 

第B問

(20)

1 1 2 4
2 2 3 3
3 3 3 3
4 4-5 2-4

10

(各5)

2025年新課程共通テスト国語のまとめ

 試作問題を見ていただき、現代文なのに横書きだったり、図やグラフの量が多かったりと、驚きが多い問題だと感じられたと思います。今回の新しい試作問題では、問題作成方針に関する検討の方向性に「言語活動の過程を重視する」と記載されているように、「それぞれの文や段落、図やグラフ、資料などが何のために存在するのか」を考えないと正解が選べないし、素早く解答できないという点が新しいと思いました。

 本文全体を論理的に追うことで「こういう内容の具体例がここには欲しい!」とか「資料はこういう内容であるべきだ!」という予測、つまり言語活動における発信者側の目線や考えに立って意図や過程を理解することが、スピードや正確性を上げていくのに必要になるでしょう。形式慣れだけでは解決しきれないような問題になっていると感じます。

 しかし、新しい問題は評論文に比べると文章の難易度は易しいため、得意になる人も出てくるでしょう。設問数は5問で現行問題の半数くらいで、語数も少ないですが、図やグラフの読み取り対策がなかなかできず、解答に時間がかかるでしょう。そのため、新傾向の第3問以外の大問の解答速度を上げておく必要があります。しかし、評論文や小説の解答速度を上げるのにも限界があるため、特に古文・漢文の対策をしておくのがおすすめです。

 共通テスト国語で高得点を取る人は、古文・漢文は取れることを前提に、現代文で安定して点数を取っています。今回、現代文の割合が増えたことで恩恵を受ける人も多いと思います。例えば、古文・漢文の配点が下がって暗記の割合が減ったことは、国語に多くの勉強時間をかけづらい国公立理系や、漢文が不要だった私立文系の生徒には良い影響も出るでしょう。

 しかし逆に、新しい形式への対策が特に必要になることや、過去問や参考書が少ないため、慣れるのが難しいというデメリットもあります。通常の評論文の参考書では、この資料の量に出会えることもなかなか少ないため、共通テスト対策の参考書や模試形式の実践問題集で、早めに対策をしていくのをおすすめします。