受験勉強を早く始める理由④ 勉強は簡単に習慣化できない

 勉強の習慣が定着するまで平均66日必要という研究結果があります。つまり約2か月間かかります。実際に指導の現場でも、それはよく見られる光景です。高3の部活を6月くらいで引退すると、集中力がMAXではない状態で夏休みに突入し、習慣化されていない状態で1日の勉強時間が長くなるため、集中力が続かずに、夏休み明けに受験相談を受けることもしばしばあります。

 勉強を始めようと気持ちを高めても、気持ちを高めて自分を律したとしても、それが当たり前化するまでは苦労するものです。そのため、うちの予備校でも初めの2か月に一番時間をかけて、強制的に自習室に来てもらったり、勉強時間を計測したり、スマホの使用時間を測ったりして、勉強を当たり前にしていきます。この習慣化されるまでの2か月間の集中力や、うまく勉強が進まない期間も考えて、早めに勉強を始める必要があります。

※令和の大学受験は情報戦 第5回 大学受験において勉強を習慣化し高い集中力で継続する方法!科学的に効率の良い勉強法!【前編・習慣化編】

受験勉強を早く始める理由⑤ 後半のプレッシャーが減少する

 受験のプレッシャーで受験生は後半、思うように勉強に集中できなくなることがあります。受験直前期になってくると、特に志望校との差が開いているほど合格できるのか不安になり、先生と友達の言葉や、模試や過去問の点数で気持ちが続かなくなってしまう人が出てきます。

 受験生の悩みや不安は、勉強をして学力を上げて、問題を解けるようにならないと解決できないものがほとんどです。厄介なのが、その不安は一時軽減されても、何度も何度も受験日まで続くことです。根本的には合格するまで解決できない問題です。

 もちろん受験勉強を早くから始めても、この不安が消えることはありません。しかし、早くから勉強を始めて、模試でA判定・B判定などの合格者平均に乗せることができれば、不安との戦いに勝ちやすくなります。それによって悩む時間や、心配事を考えて集中力が分散することも減らすことができます。

受験勉強を早く始める理由⑥ 学校が有効活用できる

 学校の授業時間は、50分授業を1日6時限、週5日あるとした場合、週にすると25時間以上になります。1日6時間、土日で12時間勉強すると54時間なので、週で考えると勉強時間の3分の1から、多いところでは半分ほどを学校の授業が占めます。そこから宿題や予習復習、定期テストの勉強で多くの時間を使います。この学校の時間を受験勉強にも活かし、かつその質を高めることが合格にも重要になってきます。

 受験勉強を開始するということは、目的・目標を明確にして、志望校の分析をすることです。自分に必要な科目、要素(英作文、リスニング、記述式など)や受験制度を知ることで、普段の宿題や定期テストに向けた勉強の、位置付けと臨み方が明確化できます。

 これによって、全科目で平均的に点数を上げにいくのではなく、受験で使わない科目の勉強時間を受験で使う科目や要素に振り分け、それを優先して勉強することで、その分高得点を狙うことができます。この受験科目や要素に応じた比重のことを考えれば、普段の宿題や小テストや復習に関しても、取り組み方を変えていくことができます。

 一通り学習範囲が終わると、学校の授業は復習や演習に入ると思います。その際に一定のレベルに到達できていないと、演習系の授業で得られるものが減ってしまい、自分ができないことを再認識させられる機会が増えていきます。しかし逆に、それまでに演習に入れるレベルに到達していれば、自分で演習をしなくても学校の授業で、演習や知識の定着が自然と行われていきます。

 そのため、受験勉強の開始が早ければ早いほど、学校の授業で知識を定着させていくことができます。もちろん、学校から出される復習や演習系の宿題にも時間がかからなくなります。このように早く受験勉強を始めることで、学校の勉強時間や普段の勉強時間も効率化していくことができます。

受験勉強を早く始める理由⑦ 急に頭はよくならない

「3年生になったら勉強する」「◯月になったら勉強する」「部活動が終わったら勉強する」……このように今できないことを肯定し、未来の自分に責任を丸投げする人も多いと思います。ですが、いざその時期になったからといって、人間はそんなに簡単には変わりません。

 急に別人になったように1日何時間も自分を律しながら勉強できたり、自分が今までやってきたスマホや娯楽をゼロにするなんて、よほどの外部的要因がない限りはできません。もちろん勉強せずに時間が経過し、3年生になったからといって、解けなかった問題が急に解けるようになるわけでもありません。

 やらないといけないと思っているのに、今始めずに後回しにして、最後に時間が足りないと言っている人を私は数多く見てきました。未来の自分に期待するのではなく、今の自分の行動で未来を変えましょう。

まとめ|受験勉強を早く始める理由

 E判定は、「あなたはこのままでは合格の可能性が低いです」と言われているのと同じです。裏を返せば、「今の勉強の方法では常識で考えると合格が難しい」という意味で、その状態から挽回するためには〝非常識なやり方〟を実行する必要があります。

 偏差値が50であれば、周りの人と同じことをしていては、いつまでたっても50のままです。偏差値65の大学をめざすのであれば、勉強する環境もやり方も勉強時間も根底から変えなければなりません。周りに流されるのではなく、自分を持って常に考えながら行動していきましょう。
 
「無理せずに1日30分でいいから机に向かうようにしよう」という人もいますが、私は違うと思っています。思い立ったときが気持ちのMAXです。そこから自分の限界まで勉強をして、それを継続していくのです。人間はどうしても気持ちの浮き沈みがありますし、自分の気持ちだけでなく、さまざまな環境によって勉強時間も左右されます。

 受験は人生をかけた挑戦です。自分の目標をつかみ取るためにも、これでもかというくらい勉強時間を取りましょう。