「どこを受験するか」より「どう受けるか」
塾に通うメリットの一つとして、大学受験に関する具体的な情報を得られる点は大きい。そうした情報を、フリーステップの受講生でなくてもまとめて聞くことができるイベントが、個別指導学院フリーステップの「関西8大学大研究」だ。
2026年は、新大阪駅からほど近い新大阪丸ビルで開催され、2,448人もの生徒や保護者が参加した。
数ある講演の中でも、「関西併願パターン必勝攻略」は、事前予約の受付が途中で終了し、当日はキャンセル待ちのために並ぶ参加者が出るほどの人気講演だった。
登壇したのは、関西圏で15年間にわたり大学受験指導に携わり、多くの受験生の出願と合否を見てきた、フリーステップを運営する株式会社成学社の小関徹氏だ。
関西の主要私立大学である関関同立や産近甲龍の受験では、「どこを受けるか」以上に「どう受け分けるか」が合否を左右するという。
第一志望の対策ばかりに目が向きがちだが、併願パターンの組み方によって合格の可能性は大きく変わる。第一志望の大学への最短ルートをつくるのが、戦略的な併願だ。
小関氏は、「併願パターンを間違えると、実力不足ではなく“受け方の失敗”によって不合格になるケースも少なくない」と指摘する。
例えば、最初の受験がいきなり第一志望校となり、緊張しすぎて力を出し切れず、不合格になる生徒も毎年いるという。
また、入学金の納入期限を読み違え、結果的に2校、3校分の入学金を支払うことになった家庭もある。受験日程を詰め込みすぎたことで、連日の試験に疲れ、本命校の受験に万全の状態で臨めなかった受験生もいた。
事前に準備しておけば避けられた失敗を減らすためにも、併願戦略を早い段階で設計することが重要だ。
同じ大学を複数回受ける戦略
なぜ併願パターンがそれほど重要なのか。理由は大きく二つある。
一つ目は、受け方を工夫することによって、合格の可能性そのものを高められる点だ。
同じ大学を複数の日程で受験すれば、試験を重ねる中で会場の雰囲気や問題形式に慣れ、徐々に本来の力を発揮しやすくなる。
また、得意科目の配点が高い方式など、自分に有利な判定方法を選ぶことによって、合否が変わることもある。各科目の配点が均等な入試方式では不合格だった受験生が、得意科目の配点が高い入試方式では合格した例も紹介された。
二つ目は、第一志望校を受験する前に、進学できる大学を一つ確保しておくためだ。
例えば、第一志望が同志社大学で、併願先が近畿大学だとしよう。早い段階で近畿大学に合格していれば、「近畿大学に進学できる」という安心感を持って、第一志望の同志社大学を受験できる。
一方、まだどの大学にも合格していなければ、不安を抱えた状態で第一志望校の試験に臨まなければならない。人間である以上、不安が大きい状況で、本来の力を最大限に発揮することは簡単ではない。
そのため、第一志望校の合格を目指すからこそ、その前に併願校の合格を確保しておくという戦略が必要になる。
「適正校」「挑戦校」「安全校」の選び方
併願パターンの基本となるのが、「適正校」「挑戦校」「安全校」の三つに受験校を分類することだ。
適正校は自分の実力に見合った大学、挑戦校は第一志望をはじめとする現在の実力よりも難易度が高い大学、安全校は合格の可能性が比較的高い大学を指す。
ここで大切なのは、「実力」を判断する基準として、夏の模試ではなく、実際に出願する時点の偏差値を用いることだ。
学校推薦型選抜(公募)なら10月頃、一般選抜なら年末前後の偏差値を参考にする。出願時点で偏差値50であれば、偏差値50前後が適正校、プラス5の偏差値55程度までが挑戦校、マイナス5の偏差値45程度までが安全校の目安になる。
講演では、「偏差値50の受験生が、偏差値60の大学に“ワンチャン”で合格する例は、ほとんど見たことがない」と説明された。
まずは夏から秋にかけて勉強し、出願までに偏差値を55まで引き上げ、偏差値60の大学を挑戦校の範囲に入れることを目指してほしいという。
大学入試は、勝てる可能性のある戦いに勝ちにいくものだ。奇跡的な逆転だけを期待するのではなく、合格を狙える位置まで実力を引き上げてから勝負することが現実的だ。
学びたい学部を軸にするか、通いたい大学を軸にするか
併願校を選ぶ軸には、大きく二つのパターンがある。
一つ目は、「学部を軸にする」パターンだ。
例えば福祉学を学びたい場合、同志社大学の社会福祉学科を第一志望とし、偏差値の差が10ポイント程度の範囲で、関西学院大学や龍谷大学などの福祉系学部・学科を配置する。
同じように、経済系や社会学系など、自分が興味を持つ分野ごとに挑戦校・適正校・安全校を組んでいけば、将来の職業や学びたい内容とのつながりを重視した併願パターンになる。
二つ目は、「大学を軸にする」パターンだ。
例えば、「関西大学のキャンパスにどうしても通いたい」という受験生は、同じ大学の中で難易度が異なる複数の学部を併願することによって、合格の可能性を広げられる。
ただし、この場合は言語系からスポーツ系、福祉系まで、学ぶ分野の幅が広がることもある。合格することだけを優先し、まったく興味を持てない学部を選ばないことが重要だ。
今回のイベントでは、関西8大学の教職員や現役学生に相談できるブースも設けられていた。学部で学べる内容を詳しく聞き、自分が興味を持てる範囲を広げておくことも勧められた。
年内の学校推薦型選抜(公募)で合格を確保しておく
学校推薦型選抜(公募)の活用も、併願戦略の大きな柱となる。
関西では、年内に実施される学科試験重視の入試が「学校推薦型選抜(公募)」と呼ばれ、産近甲龍をはじめとする私立大学で行われている。
併願可能な学校推薦型選抜(公募)であれば、合格後も一般選抜でほかの大学を受験できる。
学校推薦型選抜(公募)をまったく利用せず、年明け以降の一般選抜だけで関西大学、立命館大学、龍谷大学、大阪経済大学などを受験すると、1月〜2月の短期間に試験が集中し、連日の受験となるケースがある。
一方、学校推薦型選抜(公募)で年内に適正校や安全校を複数回受験し、合格を確保しておけば、一般選抜では第一志望校の対策と受験に集中しやすくなる。
つまり、「年内に合格を確保し、年明けは挑戦校の受験に専念する」という二段構えのルートをつくれることが、学校推薦型選抜(公募)を活用する大きなメリットだ。
挑戦校の合格発表日と安全校の入金期限を確認する
見落とされがちなポイントとして、入学金の納入期限も挙げられた。
例えば、近畿大学の合格発表が12月15日、甲南大学の第1次入学手続きの締め切りが12月22日だとする。
甲南大学に合格している場合でも、近畿大学の結果を確認してから甲南大学への入金を判断できる。
一方、甲南大学の入金期限が近畿大学の合格発表日より前に設定されていると、近畿大学の結果を待たずに甲南大学の入学金を支払う必要がある。後から近畿大学にも合格すれば、結果的に二重に入学金を支払う可能性がある。
受験日だけではなく、合格発表日と入学金の納入期限の関係まで確認して併願パターンを組むことが重要だ。家計の負担を軽減することにもつながる。
私立大学の年内入試比率は53.6%
次に、「学校推薦型選抜・総合型選抜ってなに?」という、年内入試の動向を解説する講演を紹介しよう。
大学入試において、総合型選抜と学校推薦型選抜の存在感が高まっている。フリーステップを運営する株式会社成学社の山口智也氏による講演では、その背景や仕組み、具体的な対策が説明された。
文部科学省は、大学に対して、多面的な評価によって学生を受け入れる選抜制度を求めている。その方針のもと、大学入試のあり方は大きく変化している。
2025年度の入学者データでは、私立大学における総合型選抜と学校推薦型選抜の入学者の合計は53.6%に達しているという。
一方、国公立大学や難関私立大学では、依然として一般選抜による入学者の比率も高い。推薦入試と一般選抜の両方を見据えて対策する必要がある。
総合型選抜は学校長の推薦が不要
総合型選抜は、旧AO入試にあたる自己推薦型の入試で、原則として学校長の推薦を必要としない。
主な評価方法には、評定平均値、志望理由書、面接、小論文などがあり、受験生の意欲や経験といった人物面も評価される。
部活動や探究活動、資格取得などの実績をもとに自己PRを行うが、単に目立つ実績があるかどうかだけで合否が決まるわけではない。
重要なのは、大学のアドミッションポリシーとの適合だ。大学が求める人物像と、自分の経験や志向がどれだけ一致しているかが合否を左右する。
また、総合型選抜では、志望理由や経験、将来の目標を結びつける「ストーリーの一貫性」が重要になる。
なぜその分野や大学を志望するのかという目的があり、それを裏付ける行動や経験があり、そこから得た学びを将来の目標につなげる。この一連の流れを、志望理由書や面接で一貫して説明できるかどうかがポイントだ。
総合型選抜は、高校3年生の9月頃から出願が始まり、年内に合否が決まるケースが多い。
学校推薦型選抜(公募)は学科試験の得点を重視
一方、学校推薦型選抜は、学校長の推薦を必要とする入試で、指定校推薦や学校推薦型選抜(公募)などが含まれる。
関西で「学校推薦型選抜(公募)」という場合、産近甲龍などの私立大学が秋に行う、学科試験の得点を重視した選抜方式を指すのが一般的だ。
英語と国語、または英語と数学の2科目で受験できる場合が多い。入試問題は基礎的な内容を中心に構成されることが多く、一般選抜よりも対策しやすい側面がある。
スケジュール面では、総合型選抜は9月頃から、学校推薦型選抜はそれよりやや遅れて出願が始まり、いずれも年内に合否が決まる「年内入試」となる。
そのため、一般選抜よりも早い段階から準備を始める必要がある。
また、今後の総合型選抜・学校推薦型選抜では、面接などを通じた人物評価の割合がさらに高まる可能性もある。各大学の具体的な対応については、今後発表される入試要項などを確認する必要がある。
推薦入試は、すでに一部の受験生だけが利用する「特別な入試」ではなく、主要な入試方式の一つとなっている。
併願可能な推薦入試も増えているため、一般選抜も意識しながら受験戦略を組むことが重要だ。入試方式の多様化が進む中、自分に適した方式を見極め、早い段階から計画的に準備を進めることが合格への鍵となる。
一つひとつの講演は30分
イベントに参加した高校生に話を聞くと、「一つの講演が30分と短いため、集中して聞けたのがよかった。併願パターンは自分では分からないので、詳しく教えてもらえて役に立った」と話した。
30分というコンパクトな時間の中で、受験に必要な情報を凝縮した講演が行われている。
中には、高校1年生のときから毎年このイベントに参加しているという受験生もいた。近年は、高校1・2年生の参加者も増えているという。
大学ごとの個別相談ブースでは、大学の教職員だけでなく、現役学生にも大学で学べる内容や受験勉強の進め方などを聞くことができる。
年内入試が拡大し、大学受験は情報戦という側面が強くなっている。
今回のイベントでは、390ページにわたる入試情報マガジン「WAY TO GO!関西8大学大研究2026」も配布された。関西8大学の入試問題について、詳細な分析が掲載されている。
イベントに参加することで、関西の主要私立大学の入試傾向や、具体的な受験戦略を把握できるのではないだろうか。

