併願を誤ると起こる三つのリスク

 2026年7月、個別指導学院フリーステップは夏の一大イベント「関東14大学大研究」を東京・池袋で開催。中でも、「私立大学併願パターン必勝攻略」の講演は人気を集めた。

 講演ではまず、併願パターンの立て方を間違えた場合に起きるデメリットを指摘した。

 最初の受験が第一志望になってしまうと、試験に不慣れな状態で本命受験を迎え、実力を発揮できないこともあり得る。ほかにも、複数校に合格して入学金を二重に支払うことになったり、何日も連続受験になって体力・集中力が切れてしまったりするケースもある。

 こうした事態を避けるためにも、事前に緻密な併願パターンを戦略的に組み立てることが不可欠だ。

併願の意義は「合格確率の上昇」と「進学先の確保」

 併願パターンを戦略的に組んでいく目的は、大きく二つある。

 一つは、受験の仕方によって合格する確率を高めることで、これには自身のコンディションを整えることや、第一志望の受験回数を増やすことが含まれる。

 もう一つは、「進学先を一つ決めておく」ことだ。たとえ第一志望以外に行く気がない受験生であっても、ほかに一校でも合格を確保しておくことは安心感や自信につながる。

 勉強のモチベーションを保つうえでも大切であり、実際にどこに進学するかは、すべての入試結果が出そろってから決めても遅くないとされた。

併願を考える三つの軸

併願パターンの考え方 提供:フリーステップ
併願パターンの考え方 提供:個別指導学院フリーステップ

 併願先を検討する際の軸は、「難易度」「受験科目」「生徒が重視するもの」の三点だ。

 順番に解説していこう。難易度については、自身の今の学力に応じて、「挑戦校(自身の学力より難易度が高いが行きたい大学)」「適正校(実力相当の大学)」「合格安全校(まず合格できる大学)」の三区分に分け、合計4〜6校を目安として受験し、現役合格を目指す。

 受験科目については、大学・学部・学科によって受験科目や型が異なるため、これらをそろえることで、受験で使用する科目に集中して対策できるようになる。

 文系学部でも試験科目が英語・国語・数学というケースもあるため、確認が必要だ。国公立大学を第一志望とする場合は、国公立大学の二次試験の科目と併願私大の試験科目を、できるだけ合わせることが望ましい。

 また、改訂された学習指導要領の影響についても触れられ、「数学C」については、文系数学ではベクトルのみの出題で、理系では実質的な変化はほぼないという。

 一方、「歴史総合」は、近代化・大衆化・グローバル化を軸に、世界史と日本史を統合的に学ぶ科目だ。日本史を選択していても世界史の近代以降が、世界史を選択していても日本史の近代史が出題される大学もある。配点は大きくないが、確認は必要だ。

 慶應義塾大学をはじめ、学習院大学、明治大学、立教大学、中央大学、法政大学、そして成成明学獨國武(成蹊大学、成城大学、明治学院大学、獨協大学、國學院大學、武蔵大学)や、日東駒専(日本大学、東洋大学、駒澤大学、専修大学)などの大学で、出題範囲に含めている学部がある。

 成蹊大学の経済学部・経営学部・文学部、および武蔵大学は、「歴史総合」を含まないとのことだ。

 第一志望が「歴史総合」を出題しない大学だとしても、併願校が出題する場合は注意が必要とされた。

併願パターンの組み方:二つのアプローチ

 併願パターンの組み方には、大きく二通りある。

 一つは、「行きたい学部」を決め、それをもとに行きたい大学と合格しやすい大学を組み合わせる方法だ。学部を固定することは、就きたい職業への近道になり、希望する学問を学べるというメリットがある。

 もう一つは、「行きたい大学」を固定し、一つの大学の学部間の偏差値の差を利用して合格を確保する方法だ。モチベーションを高めやすく、入試傾向が似ているため、対策を立てやすいという利点がある。

 例として明治大学を軸にした場合、同じ大学内でも学部ごとに偏差値やキャンパスが異なることが示された。

 特定の大学に進学したいから、その大学を複数回受験しようとしても、関東の場合、難関私大では受験回数が限られる傾向があることも確認したい。

 例えば、私大理系の最難関である早稲田大学先進理工学部の一般選抜は、2月16日の一度のみだ。青山学院大学法学部も、共通テスト利用や個別試験などを合わせて3回のみ。一方で、受験のチャンスが多い大学も存在する。専修大学経済学部は、共通テスト利用や個別試験などをすべて合わせると、10回以上の受験機会がある。

受験回数と合格率の関係は?

難関関東私大の受験回数と合格率 提供:フリーステップ
難関関東私大の受験回数と合格率 提供:個別指導学院フリーステップ

 講演では、受験回数別の早慶上理・GMARCHの合格率データも示され、合格率が50%を超えるのは6回受験した時点で、7回以上になるとようやく6割を超えるという傾向が紹介された。

 難関校ほど受験機会自体が少ない傾向があるため、受験生は共通テスト利用入試なども活用して、なるべく受験回数を増やすことが推奨された。

 フリーステップでは、国公立大学、早慶上理、GMARCH志望者に対し、合格率6割超を目安として、最低7回以上の受験を推奨している。

 むろん、やみくもに受験回数を増やせばよいわけではない。受験校の併願パターンについては、フリーステップでは教室責任者が生徒や保護者と話し合い、効率的な受験校選びを進めているという。

年内入試を活用した合格パターン

 関東での併願パターンで最近注目されているのが、「年内入試」である。

 東洋大学などの中堅私立大学が、学科試験の得点を重視する総合型選抜を行い始めた。試験は年内に実施される。

 これらは併願が可能、つまり合格しても入学を辞退できる。年内に合格を一つ決めておけば、年明けの一般選抜に向けて、第一志望の対策に専念できる。

 法政大学に合格した生徒の時系列パターンでは、東洋大学の年内入試合格に加え、一般選抜では共通テスト利用入試に、挑戦校・適正校・安全校の三段階で出願し、連続日程での受験スケジュールにならないように配慮した。

 一般選抜では、國學院大學や武蔵大学の受験でリズムを整える一方、学習院大学や法政大学といった難易度の高い大学の受験予定日の間隔が空きすぎないよう、成蹊大学を適正レベルの一校として受験した。

 この生徒は共通テスト利用入試で法政大学の合格が判明したため、法政大学の最終日の受験はせずに済んだ。私立文系志望でも共通テスト利用を意識し、共通テストの対策をすることは役に立つことが分かる。

共通テスト対策以外もしていきたい

 併願パターンの設計は重要である一方、その前提として、合格に必要な学力そのものを養うことが不可欠なのは言うまでもないだろう。

 来場者に配付されたフリーステップの進路情報誌「WAY TO GO!関東難関私大版」には、各大学の入試データが掲載されており、実際の問題も取り上げているため、難易度を目で確認できる。

 夏までの模試は共通テスト対策に特化されがちだが、7月・10月実施のフリーステップのオリジナルテストである「大学入試英語ステータス判定テスト」は、私大入試に直結した内容だ。

 語彙力・文法力・精読力・速読力を各100点満点で測定し、前年度の早慶上理進学者の平均は、単語88.8点・文法78.4点だった。模試成績とステータス判定テスト結果から、「おすすめ受験校リスト」を作成することができる。

 また、10月25日開催の「入試直結難関私大英語得点アップ勉強会」など、併願パターンの構築を支援するイベントも紹介された。

年内入試を見据えた対策が必要

熱心にメモをとる参加者
熱心にメモをとる参加者

 イベントの参加者からは、次のような感想があった。

 「実際にカレンダーで併願の日程例を示してくれて分かりやすかった。大学はたくさんあるので、どこをどう受けたらよいか分からない。併願の組み方を理解できて助かった

 「30分という短い講演の中にたくさんの情報があって役に立ちます」

 フリーステップを運営する株式会社成学社 山﨑拓哉氏は、「年内入試が増え、年内に一つ合格を決めておくと、一般選抜もより効率的に対策できます。年内入試では評定平均値が必要になるので、高校1年生から頑張って評定平均値を上げていきたいところです。フリーステップは、評定平均値を上げるためのメソッドと、一般選抜向けの対策のメソッドの両方が用意されているのが特徴です」と説明している。

 少子化の中でも、関東の私立大学受験は難易度が維持されている。年内入試の広がりを含め、対策も複雑になってきている。年内入試も見据えた、より念入りな対策が必要だ。