ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
ブラジャーで天下を取った男 ワコール創業者・塚本幸一

資金繰りに詰まって手を出した
“融通手形”という麻薬

北 康利 [作家]
【第32回】 2016年11月16日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

業容急拡大の裏で再び陥った倒産の危機

 昭和25年(1950年)6月に勃発した朝鮮戦争は、わが国が戦地にならず、逆に近隣に位置するわが国が戦争中の物資供給基地になったこともあり、結果として戦後復興の大きなきっかけを与えてくれることとなった。

 中でも繊維業界はその恩恵が大きく「(織機を)ガチャッと織れば万単位で儲かる」という意味から“ガチャマン景気”という呼び名があったほどであった。

 幸一が本社を移転し、室町の不動産を購入し、電動ミシンなどの設備投資や幹部要員の人材採用を急いだのも、まさにこの流れに乗ろうという意図があった。

 おかげで藪中のような、かつての大隊長が就職をお願いしてくるほどの中堅企業へと成長することが出来たのだが、急成長の陰に落とし穴が待っていた。

 売り上げも伸びている、利益も出ていると安心しているときに最も怖いのが、日常の支払いである決済資金が一時的に足らなくなって倒産してしまう資金繰り倒産だ。積極経営は運転資金を増加させる。幸一は知らず知らずのうちにその罠にはまり込んでしまっていたのである。

次のページ>> 禁断の金融手法
1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

北 康利 [作家]

きた・やすとし/昭和35年12月24日愛知県名古屋市生まれ、東京大学法学部卒業後、富士銀行入行。資産証券化の専門家として富士証券投資戦略部長、みずほ証券財務開発部長等を歴任。平成20年6月末でみずほ証券退職。本格的に作家活動に入る。“100年経営の会”顧問。松下政経塾講師。著書に『白洲次郎 占領を背負った男』(第14回山本七平賞)、『福沢諭吉 国を支えて国を頼らず』、『吉田茂ポピュリズムに背を向けて』(以上、講談社)、『陰徳を積む 銀行王・安田善次郎伝』(新潮社)、『西郷隆盛命もいらず、名もいらず』(WAC)、『松下幸之助 経営の神様とよばれた男』(PHP研究所)などがある。最新刊は『佐治敬三と開高健最強のふたり』(講談社)。


ブラジャーで天下を取った男 ワコール創業者・塚本幸一

ブラジャー。この華やかな商品に一生を捧げた男がいた。戦後京都を代表するベンチャー企業「ワコール」を創業した塚本幸一である。インパール作戦の生き残りという壮絶な戦争体験を持つ彼は、いかにして女性用下着に出会い、その未開市場を開拓していったのか。ベンチャースピリット溢れるその豪快華麗な生涯を、いま最も注目される評伝作家・北康利が描きだす!

「ブラジャーで天下を取った男 ワコール創業者・塚本幸一」

⇒バックナンバー一覧