防衛省の元情報分析官・上田篤盛氏に情報分析の最先端における、安保、北朝鮮、中国などの問題の捉え方を伺う対談の後編。インテリジェンスをビジネスに活かすための方法を聞いた。(聞き手/プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役 秋山進、構成/ライター 奥田由意)
インテリジェンスは目的次第で
正反対の結果になることも
秋山 前半では情報分析官の仕事とインテリジェンスとはなにか、について教えていただきました。後半では分析の実践方法をお聞きしたいと思います。
上田 インテリジェンスはその使い方、つまり目的次第で結論が変わります。
分かりやすいように、「スニーカーのマーケット」の話をしましょう。ある地域でスニーカーが売れるかどうか調査したところ、その地域では民族が裸足であることが判明しました。これを踏まえて報告するとき、「A:スニーカーは売れる」、「B:売れない」。どちらが正しいのでしょうか。
実はどちらも間違いではないのです。すぐに売りたいという戦略・目的のもとでの報告は「現状はあの地域の民族は、裸足の習慣なので、売れない」が正しい。しかし、長期的に宣伝し、習慣づけるという戦略が前提なら、スニーカーを持たない人ばかりなので「莫大なマーケットがあり、売れる」が正しいのです。
秋山 戦略次第で正反対の報告になるのですね。
上田 はい。「トップやリーダー」が、目的や戦略を持ち、「情報を集める人」は、戦略、ビジョンを認識し、何のために、誰のために情報分析をするのかを明確にしなければ情報分析の意味はないということです。