3. DXを加速させる

 デジタル戦略を立てることは、顧客体験の向上やオペレーションを含めた生産性の改善など、さまざまなメリットをもたらします。リセッションなどの不安定な環境がDXによる課題解決を促進する機会となることは、新型コロナウイルス感染拡大の際に起きたことを振り返れば明らかです。

 この記事では、厳しい時代を勝ち残るにはチャンスを逃さず、適切な資産、顧客、人材を適切な価格で獲得すべきとしています。また、このような不安定な経済情勢は、むしろDXのためのリソースを確保する絶好の機会だとも述べています。

プロダクトマネジメントが
投資引き締めでますます重要になる

 調査会社・エベレストグループのCEO、ピーター・ベンドール=サミュエル氏は、フォーブス誌への寄稿で、インフレと景気後退が同時に起こるスタグフレーションという経済環境の下、今後ITサービス市場に起こる変化について記しています。

 この記事の中で面白かったのが、「ITモダナイゼーションやクラウド化が当たり前となってきた現在、投資分野が絞られるようになれば、広範なモダナイゼーションとは異なった特定のビジネス価値の創出に焦点が当たるようになる」という部分です。その結果、「企業はプロダクトマネジメントを重視することによって、ビジネス価値を見いだそうとするようになる」と、同氏は述べています。

 冒頭に紹介したウォール・ストリート・ジャーナルの記事でも、具体的なビジネス価値を生み出すITへの投資が必要とありました。オンプレミスシステムをクラウド化し、モダンなシステムに変えていくということはもちろん、必要なことです。ただ、米国においてはある程度、重要なモダナイゼーションは済んでいます。「これからはクラウドシステムを使っていかに事業価値を高めていくかが必要な視点で、そのためにはプロダクトマネジメントが非常に重要となる」ということが、この記事では語られています。

 私もこの連載の『DXの成功には「プロダクトマネジメント」が欠かせない理由』という記事などで、「これからは日本企業でもプロダクトマネジメントという概念が大切になる」と述べてきましたが、それを補強する論として、この記事に注目しました。