総予測2023#81Photo by Yoshihisa Wada

芸術系大学の国内最高峰である東京藝術大学。その学長に2022年4月に就任したのが、ダンボールアートで知られる芸術家の日比野克彦氏だ。特集『総予測2023』の本稿では、これまで多くの企業や地域との連携を進めてきた日比野氏が考える、アートが社会で果たす役割やアートが持つ力とは何かについて話を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部編集委員 藤田章夫)

「週刊ダイヤモンド」2022年12月24日・31日合併号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの。

藝大の卒業生を入れて企画会議をしても
「アート思考」になるわけではない

――経済界では「アート思考」がバズワードになるなど、アートに対する関心が高まっています。

 少々辛口になりますが、会社のスタッフに東京藝術大学の卒業生を一人入れて企画会議をやったとして、それが創造性を生み出すような「アート思考」につながるかといえば、そうではないでしょう。

 想像してみてください。高層マンションに住む親が、子どもの感受性を豊かにするには土いじりをするなど触覚的な刺激が必要だと聞いたとします。そう頻繁に公園に行くことはできないため、ベランダに土を入れた箱を置き、1日1回触りなさいと言ったところで子どもの感受性が育つでしょうか。

 そうした対症療法ではなく、会社がアート思考を行うには、言葉や能力を乗り越えて気持ちと気持ちがつながる、心が揺さぶられるなど、アートの一番の魅力である人と人をつなぐ、人と人が接することで得られるエネルギーを有効に活用することだと思います。

東京藝術大学の第11代学長に就任した日比野克彦氏といえば、芸術家として活躍するだけでなく、教育者としてアートと社会を結びつける活動を積極的に行ってきた人物。その狙いは何なのか。日比野学長に明かしてもらった。