NTT帝国の奇襲#6Photo by Reiji Murai

自民党が2025年の通常国会をめどにNTT法を廃止するよう求める提言をまとめたことに対し、「NTT以外」のKDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの3社が猛反発している。対NTT連合を形成した3社は結束を強めて攻勢を掛けるが、その内実は一枚岩ではない。特集『NTT帝国の奇襲』の#6では、KDDI・楽天連合とソフトバンクの間にある確執を取り上げると共に、NTTグループをも巻き込む“楽天争奪戦”のシナリオを検証する。(ダイヤモンド編集部 村井令二)

NTT包囲で結束する
競合3社の連携プレー

 12月13日、総務省の有識者会議「通信政策特別委員会」は異様な雰囲気に包まれていた。総務省から招かれたのは、NTT、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの4社のトップ。自民党が12月5日、NTT法は「2025年の通常国会めど」に廃止することを政府に求める提言をまとめたのを受けての事業者ヒアリングだ。4社の意見は「NTTとそれ以外」に真っ二つに割れた。「NTT以外」の3社は改めて反対を表明。批判はNTTに集中した。

 KDDIの高橋誠社長は「NTTは再統合、独占回帰を狙っていると思わざるを得ない」と攻撃。高橋氏とともに、楽天モバイルの三木谷浩史会長も、2020年にNTTドコモの完全子会社化をNTTが断行したことを改めて取り上げて「どさくさに紛れてやった」とNTTを叩く。

 さらに高橋氏が「25年にこだわらずに議論するのはどうなのか」とNTTの島田明社長に迫ると、答えに窮した島田氏は「(自民党の提言にNTT法を25年に廃止すると明記されているが)25年の廃止は私たちが言っているわけではない」と応じた。

 会議の後、高橋氏、三木谷氏と共に並んで記者の取材に応じたソフトバンクの宮川潤一社長は「今日は島田さんが25年にこだわらないと発言したことはよかった」と口をそろえた。同じ時間の別の場所では、記者団の取材に応じた島田氏が「25年の廃止を目指して議論する自民党の提言には満足している」と会議でのすれ違いを修正していた。

 NTTと競合3社の会話は全くかみ合っていない。同日の総務省の有識者会議は、改めて両者の埋めがたい“ギャップ”が浮き彫りになった形だ。

 特に際立ったのが、NTTに連係プレーで揺さぶりをかける競合3社の結束の強さだ。「対NTT」で連携した3社のトップは、NTT法廃止で合同記者会見を2度も開催しており、総務省では3人が肩を並べて記者の囲み取材に応じる姿がメディアを通じて定着した。

  あたかも3社が一枚岩になって結束を深めているように見える。だが、内実は全く異なっている。次ページでは、NTT包囲網を築いたKDDI、ソフトバンク、楽天の3社の「複雑な関係構図」を明らかにする。その上で、NTTをも巻き込んだ「楽天争奪戦」による通信再編の行方を見通す。