世間の疑問に答えよう
欧州で軽減税率が機能している理由

欧州では、消費税込みの総額表示になっている

 財務省の提言した日本型軽減税率が大きな話題となっている。この案は、欧州で導入されている軽減税率が様々な問題を持つということで考え出された「苦肉の案」である。

 軽減税率については、様々な問題や課題があることを、これまで指摘してきたとおりだが、筆者のところにはその反論も寄せられている。これについて考えてみよう。

 最も多い反論は、「欧州では、軽減税率は定着しているではないか。なぜわが国ではできないのか」という質問である。

 これに対する筆者の答えは、「もちろんわが国でも導入できないことはない。しかし、欧州でも軽減税率の的確な執行には、インにボイスの導入をはじめとして、大きな手間とコストがかかっている。それがわかっていながら、あえて10%引上げ時にわが国で導入することは、政策論、財政論(コストパフォーマンス)として避けた方がいい(避けることは当然)」ということである。

 2014年4月、わが国で開催されたOECD主催のハイレベル税制当局者の集まり(VAT Global Forum)で、OECD事務局、IMFなどが、「欧州の軽減税率・非課税制度は、消費税制度の効率性を損なっており、なるべく縮小すべだ」という見解を述べ、参加者全員が賛同した。

 また、プレスリリースされた報告書には、以下の記述がある。

「今回の消費税グローバルフォーラムにおいては、消費税が所得などの異なる層に与える影響についても議論が行われた。低所得者世帯の負担を緩和するため、軽減税率を導入している国もあるが、消費税グローバルフォーラムにおける議論においては、軽減税率は、低所得者を支援する方策として、対象者を限定した給付措置に比べると極めて非効率であるということが確認された」

(参照リンク)http://www.cao.go.jp/zei-cho/gijiroku/discussion1/2014/__icsFiles/afieldfile/2014/04/24/26dis14kai4.pdf

 OECDサンタマン事務局長は、筆者に「(軽減税率問題は)Don’t Follow Europe」と忠告した。

 このように、「欧州で軽減税率がスムーズに定着している」という表現は、正確ではない。当局者は、軽減税率対象品目の拡大に強く反発しているのだが、どこの国も政治のポピュリズムにより、効率の悪い軽減税率・非課税を導入させられているというのが、実情だ。