日本人の平均寿命がどんどん延びる一方で、受け取る年金は減少し支払う医療費などは増加するという状況が現実になりつつある。こうした傾向がより顕著になったとしても、夫婦で100歳まで安泰の老後を手に入れるために、自分はいくら必要なのかを知ることから始めよう。
まずは平均数字と自分の家庭を比較して
現実的な老後生活の収支を知ることが大切!
まずは、老後のお金の具体的な収支を見ていこう。ここでは、60歳の夫婦を例に、夫が90歳まで、妻が100歳まで生きる前提で数値を計算した。
まず、支出の多くを占めるのは生活費だ。夫婦2人の1カ月の生活費を35万円(妻1人になる期間は18万円)とすると、妻が100歳となる40年間の生活費は約1億4760万円となる。これに、おおよその医療・介護費1440万円、何回かの海外旅行代などの750万円、家のリフォーム代などの750万円、ローンの精算などを加えた2億1200万円が老後の総支出となる。
一方の収入はどうなるのか。収入の中心となるのは、もちろん年金だ。夫婦2人の1カ月の年金額を政府のデータから23万円(妻1人になる期間は10万円)とすると、妻が100歳となる40年間の収入は9480万円となる。
これだけみると、とてつもない赤字のように見えるが、ここからが重要だ。この支出と収入の差を埋めるのが60歳時点での貯蓄額だ。会社員や公務員の場合は、通常退職時には退職金(一時金)が出る。この金額と60歳までに貯めることができた額を足し合わせた額が60歳時点の貯蓄額となるが、この額が大きければ大きいほど老後資金に余裕が生まれることになる。平均的な退職金の額としては、1700万円というデータがある。そして、60歳時にできるだけ資産額を増やしておけば、その額で、リスクを分散するかたちで投資を行なえば、老後資金を使い切るまでの期間をさらに延ばすことも可能になるのだ。
受け取れる年金の効率は若い人ほどどんどん悪化
60歳までにお金の問題を片付けておくことも重要
ただ、これは支出面のいくつかの条件を満たしていることが前提となる。それは住宅ローンなどの残額が1500万円以下で、子どもの教育費の支出も60歳までに終わっているということ。これが60歳以降にも残っていると、その分だけ収支は悪化してしまう。まずは、こうした支出を60代にまで引きずらないように対策を立てることが重要なのだ。
では、以上のことをクリアしたら安泰老後が手に入るのかと言えば、そうは問屋がおろさない。確かに現状で60歳を超えている人ならいいのだが、グラフのように今後は年齢が若くなるのに応じて、受け取れる年金の金額は増えるが年金の保険料と比較するとその効率はどんどん悪化することになっているからだ。
しかも、現在54歳以下の男性の場合、年金は65歳からしか受け取れない(女性は現在49歳以下の人から)。つまり、60歳で定年になると65歳になるまでの5年間は収入がゼロになるのだ。さらに、この給付開始年齢はもっと後ずれする可能性もある。
こうした従来にはなかった落とし穴も含めて考えると、100歳までの安泰老後への道はかなり険しい。60歳時の貯金額を増やすための対策と60~64歳の年金ゼロ期間を埋めるための対策に早めに着手するしかなさそうだ。
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