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拡大する日本の“特許切れ薬”市場で
繰り広げられるグローバルなビジネスモデル競争

週刊ダイヤモンド編集部
2010年6月4日
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 大型薬の特許切れ後を巡って、長期収載品(特許が切れた新薬)をもつ新薬系大手と後発医薬メーカーの総力戦が始まりつつある。

 5月28日、仏サノフィ・アベンティスグループと、国内後発医薬品大手の日医工が、共同出資会社を設立すると発表した。新会社は6月中に立ち上げられ、サノフィから睡眠障害改善薬「アモバン」など、同社がもつ長期収載品や海外後発品の導入、原料の供給を受けるほか、バイオ後発品の共同開発も模索するという。

 昨年以降、同様に特許切れ薬市場への本格参入・強化を表明する企業が続いた。新薬最大手の米ファイザー、国内の第一三共、田辺三菱製薬などである。後発薬世界最大手のテバ・ファーマスーティカル・インダストリーズ(イスラエル)は一歩先んじて、興和と2008年に設立した合弁会社で今年から後発薬を販売し始めた。医薬業界への本格参入を狙う富士フイルムホールディングスも新会社を設立して、営業を開始している。

 各社がこぞって強化するのは、日本においても特許切れ薬の市場拡大が見込まれるためだ。現在、後発薬市場は、医療用医薬品市場約9兆円の20%程度。厚生労働省はこれを、2012年度までに30%に引き上げる計画でいる。10~12年はファイザーの高脂血症薬「リピトール」をはじめ、大型新薬の特許が切れるため、長期収載品が増え後発品市場が拡大することは間違いない。

 日本の場合、新薬の特許切れ後の価格下落が緩やかなうえ、ブランド志向が強いため安い後発薬への移行が進みにくい特徴がある。新薬系大手にすれば「従来は新薬の売り込みに一生懸命で、特許切れ後の長期収載品はきちんと売り込む体制になっていなかった。相次ぐ特許切れによる減収リスクにさらされ、とれる収益は確実に刈り取ろうと意識が変わった」(大手製薬幹部)のである。

 ただし、参入方式は大きく2つのタイプに分かれる。サノフィ・日医工のように特許切れ薬専用の別会社を設立する方式と、ファイザーのように本体の一部門として展開する方式だ。新薬より安い後発薬に対抗するため、新薬系大手では製造・流通コストを抑えやすい前者の別会社方式が主流である。“ファイザー方式”で、収益を確保できるのだろうか。

 ファイザーのエスタブリッシュ製品事業部門責任者のデビッド・シモンズ氏は、この疑問に反論する。

 「“ワン・ファイザー”としてブランドを前面に出して取り組むことに意義がある。それに一部門で取り組むことは、コスト競争力の無さに直結しない。我々は、後発薬との競争が激しく難しい米国市場で、抗てんかん薬ニューロンチンの成功事例もすでに得ている。一時、後発薬の価格のほうが我々の原価より安かったが、供給経路を変えるなどの工夫で品質を維持しながら価格を抑えてシェアを取り戻したのだ。2008年に米国内のシェアは10%から60%まで回復した」。

 日本でも、特許が切れた自社品のほか、日本の製薬大手も含めた他社の後発品も扱う見込みである。ファイザーでは10年度の全社売上高見通し670~690億ドルに対し、特許切れ薬の売上げ規模は100億ドル以上(新興国部門の特許切れ薬分も含む)にのぼるとみられ、後発薬を含む特許切れ薬の市場でも存在感を強めそうだ。

 日本の特許切れ薬市場を舞台にしたグローバルなビジネスモデル競争は、どちらに軍配が上がるだろうか。長期収載品に関しては当面、新薬系大手がブランド力を活かして有利に展開できる可能性も高い。だが中長期的には、長期収載品と後発品の価格格差がいつ頃、どこまで縮まるかが、事業モデルの勝敗を分ける1つのポイントになるだろう。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 柴田むつみ)

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