
新型コロナワクチンの接種体制の確立と並行して、私はワクチン供給の働き掛けのほか、「ワクチン外交」を通じた国際関係の強化を図ってきた。前回に引き続き、菅政権下でのコロナ対策について、今回は外交面から振り返ってみよう。(肩書は当時)(第99代内閣総理大臣/衆議院議員 菅 義偉)
コロナワクチンは争奪戦に
日本は大量確保をどう実現したか
バイデン米大統領との首脳会談のために訪米した2021年4月、私はもう一つの目的を果たすべく、ホワイトハウス北西の迎賓館の一室で、米製薬大手ファイザーのCEO(最高経営責任者)であるアルバート・ブーラ氏に連絡を取っていた。ファイザー製の新型コロナウイルスのワクチンについて、日本への供給を要請するためだった。
首相による海外企業のトップへの直談判は当時、「異例のこと」と報じられたが、それまでに河野太郎ワクチン接種推進担当相、阿達雅志首相補佐官らのチームが水面下で交渉を進めてくれていた。その上で、首相としてワクチン確保への姿勢をじかに伝え、結果的に5000万回分の追加供給について契約することができた。
さらには、ブーラ氏から21年7月に開会式を控える東京オリンピック・パラリンピックに参加する選手団へのワクチンの無償提供をもご提案いただいた。これは日本側にとって予想外の、歓迎すべきサプライズであった。
ブーラ氏は東京五輪の開会式の際に来日された。この時期はまさに、日本のワクチン接種状況が宣言通りの「1日100万回接種」を超えており、ワクチン供給が足りなくなりつつあるときだった。そこで、来日の機会を捉えてブーラ氏に「10月から12月にかけてのワクチン供給分を前倒ししてもらえないか」と要請する必要があった。