韓国にとって北朝鮮危機は「日本人にとっての地震」のようなもの軍事境界線を望む展望台

「日本人にとっての地震みたいな感じかと思います」とソウルの人に言われた。いつか来るかもしれない大地震。子供の頃から心のどこかで覚悟し備えながら、でもしばらくは大丈夫だろう。震度2や3で、地震を知らない国の人は大騒ぎをするけど、日本人はあまり気にしない。

「私たちにとっての北朝鮮危機も同じ」と言う。自然の驚異と実在する国家による脅威はそもそも違うけど、少なくともその感覚は理解できる。「ここ数カ月の状況は震度3くらい。実際、自分たちにとっては平時なんです。アメリカや周辺の国がやたら煽っているだけ」

 韓国大統領選挙で文在寅氏が勝利した。投票日直前、私は北朝鮮と韓国の軍事境界線周辺にいた。「サンデーステーション」で安全保障の観点から見た大統領選を取材するためである。

 ここのところ「先制攻撃」やら「空母派遣」などと危機を煽るような文言が日本のメディアでも飛び交っていたが、軍事境界線は極めて静かである。

 もちろん昨年8月には非武装地帯に北朝鮮が新たな地雷を設置したという情報がある。さらに、私が取材中も車のFM放送からは「南朝鮮の保守勢力はパククネと一体になってあらゆる罪悪的な妄動をとってきた」といった選挙に介入するような北朝鮮による番組が流れているし、軍事境界線では韓国から北朝鮮に向けて、最新のヒット曲などを含む大音量の宣伝放送が行われていた。