写真:「労働新聞」ホームページより

朝鮮半島情勢は、北朝鮮の核不拡散条約(NPT)脱退を機に米国が「戦争準備」をした1994年の「第一次北朝鮮核危機」以降、最も緊張している。韓国では文在寅(ムン・ジェイン)政権が誕生し、9年ぶりに保守から革新への政権交代である。文大統領が秘書室長として仕えた盧武鉉政権のように対北朝鮮融和政策をとるとすれば、トランプ政権が誕生して以降とられてきた対北朝鮮包囲網に穴が開き、更に事態が混迷していく事になる。そして14日には北朝鮮は新型と称するミサイル実験に踏み切った。新たな情勢の中で、はたして北朝鮮問題の解はあるのか。(日本総合研究所国際戦略研究所理事長 田中 均)

北朝鮮の核放棄はあり得ないのか
「追い込み」に躊躇があった過去

 北朝鮮は2006年から5回も核実験を繰り返してきた。

 核弾頭の小型化も試みていると推測される。ミサイルの発射実験も頻繁に繰り返し、中長距離の弾道ミサイルや潜水艦発射ミサイルの開発にも着々と取り組んできた。経済規模では韓国との差はあまりに大きく、北朝鮮は体制の生き残りのためには核保有が唯一の手段と考えているに違いない。

 さらに米国に届く弾道ミサイルを保有すれば、米国に対する抑止力となるのではないか。そうだとすればもはや北朝鮮が核を放棄することは考えられないではないか。これが内外の多くの専門家の共通認識といっても良い。

 しかし、仮に核を持ち大陸間弾道ミサイルを持ったにしても体制の生き残りを図れないとしたらどうであろうか。外国からハードカレンシー獲得ができない、石油の供給が絶たれる、といった事態になっても北朝鮮の体制は維持できるのであろうか。核を保有したとしても資金・戦略物資が絶たれた状況が長く続けば、体制は崩壊していかざるを得ないのだろう。