産業空洞化と「経営戦略のゼロサム状態」
失われた国内雇用は簡単に再生できない

 〔図表 14〕は営業利益を用いたものだ。次の〔図表 15〕は戦略利益ベースでのタカダ式感応度分析である。

 〔図表 15〕を見ると、キヤノンの1人負けは相変わらずだが、その他に富士フイルムとリコーの周回遅れが認められる。〔図表 8〕の戦略利益にある「(基準固定費)×(実際操業度率)」の要素が、両社の業績を押し下げているようだ。

 それ以外の特徴といえば、8社すべてが「プラスになっていない」ことだ。〔図表 14〕では2010年以降、上昇傾向にあるのと大きく異なる。

 第64回コラム(自動車3社&電機8社編)でも、〔図表 15〕と同様の波形が見られた。その際、次のことを述べた。「1円の円高に対して、トヨタ以外の10社も凪のような推移を示しており、一見したところ積極的な経営戦略を模索していないかに見える。ところがこれが曲者で、深く静かに、されど各社ともしっかりとした事業転換を行なっていることを、いずれ別の機会で紹介できるだろう」。この解を以下で示そう。

 私見では、戦略利益が凪のような推移を示すのは「ゼロサム状態」である証拠と考えている。すなわち、国内の事業場(工場や支店)を残して海外の事業場を拡大しているのではなく、海外で拡大した事業場と同じ規模の事業場を国内で閉鎖しているということだ。プラス(海外)とマイナス(国内)を合わせるとゼロになるので、〔図表 15〕は安定した推移を示す。

 円高は、海外でM&A戦略を展開するニッポン企業にとって追い風となるが、それと同じ風力がニッポン国内では逆風となって吹き荒れているということだ。「マクロ経済分析」などからは、こうした解釈は生まれない。筆者オリジナルの「戦略利益」を用いた「ミクロ経済分析」が浮かび上がらせる顛末であり、個人的な見解にとどめておく。

 以上が、民主党・鳩山政権が誕生して以来、ニッポン企業が強力に推し進めている「産業空洞化」という名の経営戦略であり、2年前(09年9月)にニッポンの国民が選んだ道に対して企業が選んだ道なのだ。野田政権になったところで、精密機器メーカーなどがニッポンに戻ってくるわけはなく、再生されるはずのない「来し方」を、今さら悔やんでも意味はないのである。

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