その〔図表 12〕を見ると、貿易立国を標榜してきたニッポンの、「終わりの始まり」を暗示しているかのようだ。精密機器業界の軸足は海外へシフトし、外国企業と伍して闘う姿が浮かび上がる。
もはや企業業績は、国内の企業同士を比較するものではなく、外国企業との比較がメインになってくる。それにもかかわらず、例えば国際会計基準IFRS導入延期論(週刊ダイヤモンド:Inside Enterprise第434回)の話を聞くと、「会計基準というのは、企業のために議論する」のではなく、「他の誰かの既得権益を守るためにある」ように思えてしまうから不思議だ。筆者はIFRS全面支持派ではないので、別にどうでもいい話なのだが。
〔図表 4〕のROE-TAKADAや〔図表 6〕のPER-TAKADAで、09/9(09年9月期)から業績が回復している理由も、これまた明白だ。民主党政権の政策が、企業のROEを改善させたのではない。09年9月に鳩山政権が誕生したことにより、精密機器業界はニッポンを見限って国内脱出を図り、海外での収益基盤を拡大する経営戦略を選択したのだ。その結果、〔図表 4〕のROE-TAKADAが改善していった、と筆者は解釈する。
鳩山政権から菅政権に変わっても、〔図表 12〕が示す右肩下がりの傾向は変わっていない。2010年の暮れ、菅前首相は「雇用、雇用、雇用」と三唱したが(首相官邸/雇用戦略対話)、雇用のモトとなる企業を国外へ追い出して、「産業の空洞化」を進めたのは当の民主党政権なのだ。
中原圭介著『騙されないための世界経済入門』の言を借りるなら、「経済は理論ではなく、人間の心理で動く」(同書65頁)。民主党政権が、国内の企業に対して冷淡な政策を展開してきた以上、企業心理が国外へ向かうのは当然の帰結だ。以上が〔図表 3〕(1)の仮説に関する証明である。
1円の円高で蒸発する利益は数十億円!?
「キヤノン1人負け」の構図
〔図表 3〕(3)の仮説を証明してみよう。次の〔図表 14〕は、第64回コラム(自動車3社+電機8社編)や第65回コラム(ニトリ&ABCマート編)でも紹介した「タカダ式感応度分析」である。1円の円高によって、どれだけの営業利益が蒸発したかを時系列で表わしたものだ。

〔図表 14〕を見ると、失礼ながら「キヤノン1人負けの構図」が浮かび上がる。第64回コラム(トヨタ&ニッサン&ホンダ編)でも、「トヨタ1人負けの構図」を紹介した。
トヨタとキヤノンに共通するものは何か。「経団連会長」輩出企業である点だ。会長ポストを経験すると「1人負け」になってしまうジンクスでもあるのだろうか。



