東のセンベロの街「立石」
北口から始まる再開発

再開発は買い!品川のムサコ「武蔵小山」ともつ焼きの聖地「立石」京成押上線「立石」駅と線路の高架化に合わせて進められる駅前再開発。駅北口にはタワマンの他、葛飾区役所の庁舎移転が検討されている業務棟も建設予定となっている。昔ながらの鳥料理店や赤線跡の飲食店街も取り壊し対象に

 夕方、京成押上線「立石」の駅に着いて、空を見上げると、飲食店から煙がたなびく様子がうかがえる。ここはもつ焼きの聖地であり、それは付近にセルロイド加工の町工場が多くあった、戦後復興期の記憶を呼び起こしてくれる。ここもまた、千円札を握りしめて酔えるセンベロの街である。

 葛飾区役所の最寄り駅で、区のほぼ真ん中に位置する。隣の「青砥」「四ツ木」駅とは異なり、この駅の前後だけ京成線が地上を走っていることから、高架化による11か所の踏切の廃止も課題として突きつけられていた。

 これは「十条」でも同様だが、線路と駅を高架化するとき、行政としては道路の整備と木造住宅密集地域の解消を一緒に実現しようとする。「立石」の場合は、北口を再開発して、36階建てのタワマンと13階建ての業務棟、そしてこれまでタクシーも近寄れなかった駅前に交通広場の設置を計画している。再開発準備組合は07年に設立され、都市計画決定されたのは昨年6月のことである。地権者がみな賛成しているわけではないことは、心配する人の会が立てた「街壊し再開発は反対」ののぼりに表れている。

再開発は買い!品川のムサコ「武蔵小山」ともつ焼きの聖地「立石」 左/葛飾区の有名人といえば、「葛飾の寅さん、亀有の両さん、そして四つ木・立石の翼くん」。キャプテン翼の像が街の各所に置かれている。
中/ほぼ廃墟化している北口の「呑んべ横丁」。
右/南口の立石仲見世東側でも準備組合が発足

 とはいえ、京成電鉄の連続立体交差事業は22年度内の工事完了を目指してすでに始まり、線路沿いの北側では事業予定地が次々に更地になっている。

 北口再開発の竣工予定も22年度であり、歩調を合わせていることが分かる。交通基盤整備なども含む総事業費は860億円のビッグプロジェクトである。業務棟に区役所の新庁舎を設けるかも今後の検討点である。

 「立石」は区内でも都心部へのアクセスが比較的いい。都営浅草線直通で「日本橋」まで20分もかからない。そんな点も、タワマン開発の追い風になっている。区としては、高齢化が進む地域の活性化のためにも、子育てファミリー層の流入に期待しているようだ。