IFRSの採用理由には、国際的な事業展開や資金調達のためという面もあるが、M&A(合併・買収)を重ねる企業にとっては、買収した会社ののれんを定期的に償却しない点も誘因の一つである。費用計上しない分、会計上の利益が膨らむからだ。現時点で、IFRS採用企業は採用予定会社を含めて193社に上る。
のれんを定期償却しない分、買収先の会社の業績が悪化したときに、減損で一度に多額の損失を計上することになる。これは会社の内情に疎い一般の投資家にとってはデメリットといえる。そこで、IFRSを策定するIASBがのれんの償却を検討することになったのである。
償却するとなれば、M&Aで多額ののれんを計上している企業にとっては会計上大きな影響が出る。
ソフトバンクはのれんが
自己資本の8割を超える
そこで、IFRS採用企業の売上高上位50社について、のれんの自己資本に対する比率の高い順に並べてみたのが下表だ。のれんの償却分全てが、自己資本を減少させるとは限らないが、自己資本に対する比率が高ければ償却の影響が大きいといえる。加えて、のれんを仮に20年で分割償却したとした場合の、営業利益をシミュレーションしてみた。
トップは、M&Aを継続することで業容を拡大してきたソフトバンクグループ。2018年3月期末ののれん4兆3026億円は自己資本の83%に当たる。のれんの額自体もトップであり、20年で償却した場合に営業利益は2000億円強減少する計算となる。
アイルランドの製薬大手シャイアーを約6.8兆円で買収することを決めた武田薬品工業は6位。しかし、ここにシャイアー買収によるのれんは含まれていない。17年12月期末のシャイアーの自己資本は約4兆円。買収額との差額は約2.8兆円だ。同社の資産を時価評価するため、その全てがのれんとなることはないと考えられるが、大きく膨らむことは確実だ。仮にのれんが18年3月期末の1兆0292億円から2兆円に膨らむとして、20年償却なら年間1000億円ずつ営業利益が減少する。
のれんの償却は、キャッシュフローに影響を与えない。とはいえ、会計上の利益の減少、自己資本の棄損は、IFRS採用企業にとって無視できるものではないだろう。



